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イシノラボ/マスターズ店長の連載

第1弾 日本オーディオ史

第9回 DCアンプの開発・商品化

1975(S50)年の春、前任者の商品化プランを引き継ぎを眺めていると、次期プリメインアンプにAUー607、AUー707という仮のモデル名があった。
とても字体バランスが良く、呼んでみても響きが新鮮であった。
このモデル名はいけると思った。

さて、アンプの内容が問題であった。
当時の回路は初段回路こそ、差動構成であったが、二段目はブートストラップ付き増幅回路がノーマルであったし、NFBが差動回路の反対側に戻るサミングポイントは抵抗にシリーズにケミコンが付けられて、低域にいくに従ってNFBが深くなり、低域が下降する回路いわゆるACアンプであった。
一方、MJなどのオーディオアマチュア誌ではDCアンプの試作例が掲載され始めていた。
メーカーエンジニアは概して、アマチュアをバカにして、相手にしないか、軽視していた。
(この背景にはある時期、雑誌社から、アマチュアの作ったアンプの測定依頼があり、測定してみると発振していたり、動作が不安定だったりして、とてもオーディオアンプとして通用するものではなかったことがあった。メーカーエンジニアはとても相手に出来ない!という意識が刻み込まれた。)
それではメーカーに入ってきたエンジニアのオーディオに対する思い入れ、意欲・問題意識はどうだったかというと、どこの会社でも10人にひとりくらいが熱心かな?という程度であった。
(今ではオーディオがマイナーになったので、好きな方が担当していると思うが、ベテランの方がリタイヤして、アナログ技術の面では、測定では表現できないポイントは継承出来ない結果になっている。)
このことはわたしがサンスイから飛び出して、いろいろなオーディオ会社の設計に携わって、感じたことなので、本当である。

それでは、海外に目を向けると、プロ用アンプでフェイスリニア700A、ハイエンド向けではアンプジラブランドがDCアンプ構成で売り出していた。
アンプジラのパワーアンプについてはAESコンベンション(LA)会場で展示してあって、苦労して回路図らしきものを入手した。
理論どおりになっていたが、実際の使用に際しては、DC安定度に問題ありと睨んだ。
実際、アンプジラは故障が多く、輸入代理店は苦労していたらしい。
JBLのプリメインアンプSA600はまったくユニークなシンプル回路構成であったが、3段ダーリントンの電源を理論どおりに0.6Vづつアップさせることはメーカーとしては面倒で、採用するところはなかった。
ダーリントン段のエミッター抵抗をNch−Pchを中点を通らず、直結させるTサーキットはすべてのメーカーが採用した。
また、このアンプは反転アンプだったので、これも日本のメーカーは好まないかった。
JBLスピーカーの極性は他と反対なので、このアンプを使えば、他と同じように+なら、コーン紙が前に出ることになる。
JBLアンプの回路で20年後に試作してみたが、ユニークなサウンドが出て、動作も安定であった。
JBLのこの回路も反転型のDCアンプと呼べるものであった。

1976年の秋には、新型アンプを市場に投入して、サンスイのアンプの挽回を図ることが大命題になっていた。
時間的猶予はあまりなかった。
アンプの真価は回路構成、構成するパーツ、具現化する構造(レイアウト)と自分で思っていたので、まずが回路構成をどうすべきかを悩んだ。
上司といろいろ話しているうちにアンプにはそれほど詳しくないのに、上司はポツンと”DCアンプいこう!”とつぶやいた。
わたしは、いろいろ具体化には問題あるにせよ、これが天の声だと思った。

従来のアンプは低域になるに従って、NFB量が増して、アンプのゲインが下がり、最終的には1〜2Hzあたりでゲインがほとんどなくなり、DC領域になれば、ゲインゼロになって、アンプの出力からDC成分が出ることはなくなる。
(CDオフセットは別問題として、)DCアンプ構成にすることはDC領域でもアンプは増幅するので、アンプを構成する半導体素子がDC領域でふらふら(ドリフト)すれば、アンプからDC(直流)が出てしまい、接続されるスピーカーのセンター位置がずれてしまう。
ひどい場合はスピーカーのコーン紙は前に出たり、引っ込んだりする。
有害である。
NFB量を増やして、アンプ出力を押さえ込んで、DCを少なくすることも考えられるが、その分、増幅度も下がるので、限度がある。
アンプのDC変動は理論的にはほとんど、アンプの初段で決定されるから、初段の動作が安定していれば、問題は解決する。
そうなると、初段のデバイスが重要である。
アンプ電源変動で、温度変化で、ドリフトしやすいトランジスタは問題があった。
その点、FETはクロスポイント(あるドレイン電流に設定すると電圧・温度変化に対して、ドリフトが格段に少なくなる。)にドレイン電流を設計すれば、かなり安定になる。
ちなみにWRアンプでは、電源変動には、安定化電源を設置して、電源変動ドリフトを無くしている。
その頃はデュアルFETに使えるものがなく、困っていたが、SONYに相談すると、何とか作りましょう、と言ってくれたが、半導体がそんなすぐ作れるものではない。
そこで、2SK43というFETが優れていたので、これをデュアルタイプにしようということになった。
どうにか、発売に間に合うことになるのだが、試作は2SK43を2個接着剤で貼り付けてやっていた。
出来上がったデュアルFETは2SK97であり、未だに、アキバの若松通商で高価で売っている(¥1,800くらい!)。
勿論、トランジスタも同じような開発やっていて、三菱が熱心であった。
特に、Yさん(現ルネサス半導体開発営業部長)はサンスイに何度も見えて、試聴を繰り返して、音の良いトランジスタを作ってくれた。
このなかで傑作は2SC1581のデュアルトランジスタで、WRアンプの初段に採用されている。
当時は私はそこまで知らなかったが、川西氏はちゃんと、優れたデバイスを選択していた。

当時はDCアンプはダイレクト・カップルという意味をあって、入力コンデンサが省けるFETの方がセールスポイントになった。
(このあたりが、時流があるので、ビジネスとなると複雑な想いがある。)
2年後、瀬川冬樹氏の試聴室でマークレビンソンの25W、Aクラスの巨大アンプを聴いてすごい!と思った。
回路図をいろいろは手づるで探ってみると、初段はトランジスタ構成になっていた。
傾向として、TRの場合は明晰なサウンド傾向、FETの場合は、奥行き感を表現するような、空間表現で得意であったように今でも思っている。


2006年4月16日掲載


この記事は、2006年4月9日に”WestRiver(ウエストリバーアンプ)”のサイトに投稿した記事をベースに書き直したものです。

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