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イシノラボ/マスターズ店長の連載

第1弾 日本オーディオ史

第13回 プリメインアンプ発売前夜とその後

1976年頃のAU−607/707と競合するプリメインアンプを述べておこう。パイオニアSA−8800II(¥59,800)、SA−8900II(¥79,800)、テクニクス 80A(¥88,000)、トリオ(現ケンウッド)(¥78,000)、KA7700D(¥110,000)、YAMAHA CA−800II(¥95,000)、CA−1000III(128,000)、マランツ MODEL 1150MKII(129,000)、あたりが有力機種であった。勿論、当時は消費税はなく、代わりにメーカー出し価格に15%の物品税がかけられていたから、実質、消費税5%より高い7〜10%くらいの税金がかけられていた。

いよいよ、9月に入って、定価を決めなければならない。いろいろ、商品力を高めるためにコストアップしており、原価計算してみると、とてもAUー607は¥69,800は無理であった。¥79,800あたりが経営的には妥当であった。この機種で挽回したかったので¥69,800は譲れなかった。社内会議のすったもんだの末、¥69,800に決まった。AU−707も原価的には苦しかったが、利益の最低基準は何とか確保する¥93,800に決まった。

話を前回の続きに戻すと、中低域の再現をどうしたら、もっとリアルに出来るかを考えて見た。スピーカー設計の経験から書くと、ウーファユニットのインピーダンスの最低ポイント(すなわち、直流抵抗分だけになる周波数は多くは100Hz〜200Hzあたりの中低域になる。)をなるべく低く設計すれば、トランジスタアンプの場合はパワーが多く入るようになるので、豊かになる。かってのJBLのウーファユニットはこのあたりの周波数では8Ω表示でも4Ωくらいに意識的下げていたようだ。JBL4320は重低音は出ないけれども、中低域は充分出ていたので、このあたりはそれほど気が付かなかったのであった。パワーアンプダイレクトで聴く場合とプリアンプを介して聴くとどうしてもプリアンプを通したほうが中低域がリッチに聴こえることを皆さん、体験していることと思う。そこで、プリアンプ部のラインアンプのカップリングコンデンサの定数、プリント基板でのグランドパターンの強化(裏配線で低DCR化)して、かなり改善された。最後はパワーアンプのアイドリング電流をやや大目の40〜50mAに工場側と検査部門に頼んでしてもらった。(メーカーでは10kHzの出力を出して、ひずみ最小になるようにアイドリング電流を調整する。0.22Ωのエミッタ抵抗の場合20mA程度になる)ひずみのスペックは充分余裕があった。

思わぬ落とし穴

量産の場合、梱包状態での落下試験を合格しなければならない。面、稜、角など6箇所を90cmの高さから、コンクリート面に落として、アンプに傷がついたり、変形してはならない。メーカー製アンプのシャーシは車のようにモノコック構造であるから、トランスとかヒートシンクが取り付いて強度が出るようになっている。AU−607では当初より、シールドケースとか、追加したので、重くなっていたのだ。電源トランスが10mm程度、陥没してしまったのである。さっそく、裏板とシャーシの間にサポート金具を追加してことなきを得た。

AU−607の弱点

構造上、電源整流、プロテクション基板ユニットの取り外しが大変でこの部分の修理に手間がかかることであった。昨年、実際、AU−607の修理依頼があって、苦労した。ぶつぶつ、文句を唱えたところで天につばする思いとはこのことだった。

次は、マスターボリウムをプロ風にステップタイプにしたことであった。当時のアルプスは−60dBしか絞れず、夜半、リアフィールドリスニングでは音が大きすぎるとのクレームがあった。AU−707では−20dBのミュートスイッチがついているので問題なかった。次のDシリーズからは連続可変で−80dBまで絞れるタイプにした競合各社も追随したので、わずかの間でステップタイプボリウムは単品コンポアンプから姿を消した。

広告作戦をどうするか?

広告部から、カタログ、オーディオ誌への広告はどうしようかと相談を持ちかけられた。このアンプをどのようなうたい文句で売り出すべきか?関係者が集まって、会議するが、なかなか良いフレーズが浮かんで来ない。わたしは”ワイドレンジNFB”と提案したかったが、普通の人には意味が分からない。アンプ設計者でも良く考えないとピンとこない。わたしとしては可聴帯域のはるか低い100Hzあたりから、NFB量が下がり始めるアンプと違い、可聴帯域はきっちりと同じNFB量が正しくかかっていることを言いたかったのだ。結論はDC領域から200KHzまでの周波数特性をカバーしているので、”ワイドレンジDC!アンプ”がキャッチコピーに決まった。

オーディオ誌に書くことには学生時代から製作記事を書いていたので、書くことは苦にならなかった。宣伝部スタッフのコピーをずいぶんと書き直して嫌がられたのも、今となってはお互い良い思い出になった。カタログも通常よりスペースのある、見開き6ページになった。

いよいよ初ロットの生産がスタートする

10月に入って、いよいよ初ロットの生産スタートとなった。生産工場は埼玉の国道沿いに格子模様の工場があったのをご存知の方も多いであろう。今はスーパーストアになってしまい、あとかたもない。

同期入社の仲間(現在も協力関係にある)が工場ラインのリーダー、検査課のリーダーにいた。3人ともオーディオ好きでは意気が合った仲間であった。何とか安定した商品を届けたい、社内、特に営業部門への拡販の材料にと、これまではない初ロットアンプのヒアリングチェックをおこなうことにした。通常、アンプメーカーでは5台程度抜き取って、特性・使用チェック(つまみがガタがないか、アンプとして普通に使えるか、などなど、)、外観チェックなどを設計者が確認するが。

我々は初ロット2000台のうち、400台程度をヒアリングチェックしようということになった。当時の工場は元気いっぱいであったし、工場長も学校の先輩であったためもあって許可してくれた。出来上がったアンプを工場試聴室に次々と運び、電源を入れ暖めておいてから、音楽を聴く。勿論、手垢などをアンプにつけてはいけないから、白手袋着用であった。最初は1台10分程度聴いたが、慣れるに従って、2分程度聴けばOKであった。出来栄えは試作品に極めて近似しておりgoodであった。その中で、ソフト気味、ハード気味、中間と3種類に分けることも出来るようになった。この作業には5日間を費やしたが、思わぬ副産物があった。手伝っていた若手の検査員が興味を持ってくれ、慣れてくると、ほとんど我々レベルで音質識別できるようななったのである。このあと、新製品の音質管理は彼を中心におこなうことになり、音質にわずかでも変化があると、すぐ、我々に連絡が入るようになった。必ず、変化には原因が見つかるようななった。こうして、自信をもった製品が10月下旬、全国の販売店に運ばれていった。

販売店の様子

今でも同じと思うが、新製品のお店への導入はまず、お店に展示してもらわなければなかなか売れない。そこで展示用の製品は通常より安くして売る。その製品はライフが終る頃になれば展示品処分ということで、販売店は安く売る。このころは2000店以上あったから、展示用だけで2000台以上売れてしまうのである。そのうえで、お客さんが買いにくるので、1976年の年末までにAU−607は6000台、AU−707は5000台の生産予定して、どんどん作っていたので、営業部門は展示スペースを確保して、売って、さらにお客様に売ってもらわなければならない。当時は年末、7月のボーナス時期は各メーカーは販売ヘルパーを出して、販売店の後押しするのであった。

お店にはA、B、C社の販売ヘルパーがいて、お店でしのぎを削る有様であったのである。各社、営業部門以外の事務部門の人材も一時期投入して、販売を競っていたのであった。ともかく、ベストを尽くして、翌年1月での販売実績を待つしかなかった。当時はEIAJ(日本電子機械工業会)加盟メーカーは毎月の売上を正直に申告して、毎月のトータル台数を価格帯別に発表していたから、分母をそれに、分子を自分の台数にすればシェアーが分かるのであった。また、当時の業界向けオーディオ誌”オーディオ専科”では毎月、主要販売店での売上調査をしていて、その結果を紙面に発表していたから、どこのお店が何が売れているのかもある程度わかった。

さあ、滑り出しはどうなったか?


当時のSANSUI生産工場
当時のSANSUI生産工場
(特別にサンスイOBサイト支配人様に掲載許可をいただきました。)

2006年5月12日掲載


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