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イシノラボ/マスターズ店長の連載

第1弾 日本オーディオ史

第43回 オーディオ評論家さんとの係わり合いで得たこと その2

金子英男さんのこと(続き:オーディオ界に果たした業績も含めて)

AU−607,707シリーズがサンスイアンプの復活の糸口になったあと、ダイアモンド差動回路搭載のAU−D907を開発するときの様子をお話してみよう。

第15回第17回で述べたように、D907のブロックケミコンはオーバル(楕円)型カスタムケミコンを搭載することになった。金子さんは、ニチコンのエンジニアとコンタクトがあったらしく、我々が試作品アンプを持参したときは特にコメントもなく、“そうか!”という感触であった。

しばらく、エージングしたあと、レコードを掛けた。スピーカはAUREXの3WAYであった。このスピーカは、金子さんのアドバイスをAUREX技術陣が取り入れて、特色あるサウンドとなっていた。その特色とは、共振現象を極力低減するために、スピーカフレームにはブチルゴムを多量に貼り付けてあり、コーン紙自体も裏側に張ってあるようだった。確かに共振するようなサウンドは少なかったように聴き取れたが、その分、振動系が重くなって効率が悪化していた。84dBくらいだったように思う。アンプ側からすれば、鳴らないスピーカであった。試聴するレコードはもちろんクラシック一辺倒で、それも輸入盤ドイツグラムフォンが多かった。フィシャー・デゥスカウのシューベルトの歌曲を随分聴かされた。

私は、金子さんに失礼も省みず、オーディオファイルはジャズやPOPSを聴く方のほうが多く、クラシックとは録音方式も違うし、少しは聴いたほうがよいと言う意味を言って、美空ひばりの歌謡曲を掛けて貰った。明らかに不機嫌な顔色に変わっていた。

私もサンスイに入社する前はクラシック一辺倒であって、他の音楽は認めたくないオーディオファイルであった。ところが、クラシックだけでは独りよがりのサウンドになってしまうと、スピーカの設計をやっていて気がついた。また、QS4ch開発チームに入って、レコード会社やレコーディングスタジオに出入りしてみて、クラシック以外にも魅力的な音楽・サウンドはたくさんあることが分かり、音楽・サウンドに対して、間口が広くなった。

同行したN・Aさんによると、金子さんは、私の出入り禁止のようなことを言ったらしいが、N・Aさんがとりなしてくれて、また金子さん宅を訪問できるようになった。

金子さんによれば、クラシック音楽の観点から言えばJBLスピーカはとても聴けないという意味のことも言っていたが、これはイギリスに出張したときにイギリスのスピーカ技術者がJBLサウンドに対して同じようなことを言っていた。しかし、JBLがヨーロッパ志向やクラシック音楽を重視しすぎたらJBLでなくなってしまう。JBLはいつまでも活発な反応を見せるスピーカであるべきと思っている。

金子さんの主な活動場所は音楽之友社の“ステレオ”であった。その試聴室のスピーカは当時JBL4344であったから、金子さんはストレスであったに違いない。そうは言っても、クラシック一辺倒では評論ビジネスにならないから、仕事場ではそのような様子は見せなかったと言う。

大分、話はずれたが、戻すと、AU−D907の試作品を聴いて、金子さんは“まだ、サウンドが荒れている”と言った。確かにそのように聴こえる部分はあったが、その成分を取ってしまうとアンプの瞬発力がそがれるような気がしたので、特に気にしなかった。

しばらくして、金子さんは試作品のフィルムコンを取り出して、“これをブロックケミコンに並列に付けて聴いてみたい”とリクエストされた。1μの細長い形状で、とりあえずのネーミングは“Vコン”ということだった。ブロックケミコンに付けてみると、確かに透明感が増し、分解能も良くなるように聴き取れた。“これは悪くないですね!”と私が言うと、“そうだろう!”と我が意を得たりという顔色であった。フィルムコンデンサメーカーと共同で開発した試作品と言う。当時は、オーディオは右肩上がりであったので、部品メーカーもオーディオに進出したいという気持ちがあったようだ。

1970年代の初めの頃、部品によって音質が変化するということはあまり知られていなかった。このことを明確に主張したのが評論家では金子さんが最初であった。

オーディオ各社のエンジニアは気がついて、部品の選択に留意するようになった頃であった。金子さんはオーディオ評論家だけでなく、部品開発アドバイザとしてもオーディオ界での役割を演じようと思ったに違いない。

金子さんは当時、最高級な測定器、HPの4343オーディオアナライザを購入したが、測定器では部品のサウンド差異がまったく見つけられないと、それからはヒアリングで決めるようにしたらしかった。

金子さんがアドバイスして作らせたVコンは形状が縦長で、従来の正方形に近い形ではなかった。このような形状にして量産するには、生産工程において、自動機を改造しなければならないから、コンデンサメーカーは売れないと困ってしまう。AU−D907では、ブロックケミコンと並列にトータル4個つけることになる。コストアップは¥1,000近くなるので、採用はすぐOKというわけにはいかなかった。

そのアンプを持ち帰り、会社の試聴室で聴いたり、井上さんにもブライドテストしたり、別の評論家さん宅でも聴いたりした。いずれもAU−D907のサウンドクオリティを下げることなく、アップするものであった。上司は、それらの結果を聞いてOKしてくれた。また、コストダウン会議(私は微妙な立場になったが)が開かれ、コストアップを認めてくれた。これは発売前から社内でも“売れそうだ!”と言う評判があったからだと思う。

金子さんのオーディオ界に残した足跡は、オーディオ評論家という立場も立派であったが、金子さんが提唱した“部品によって音質が変る!部品開発・改良が必要!”は、以後、オーディオ界の常識となった。また、それを実践して良質な部品の登場に大きな役割を果たされた。

私が思い起こす部品では、コンデンサーでは、“V,VIIコンデンサ”,”Λ(ラムダ),ΛIIコンデンサ“,”ピュア・フォーカスケミコン”,“グレイト・サプライケミコン”,“AWA,AWDケミコン”,“ブチル・スチコン”などがある。抵抗では、“RMA,RMG”,“大型高音質エミッタ抵抗”などがある。

掲載する画像は、私が今なお持っていた部品である。“RMA,RMG抵抗”,“AWA,AWDケミコン”,“ブチルスチコン”,“メタルケース入りスチコン”,“Vxコン”,“Uコン”である。

上記の優良部品は、金子さんのアドバイスとサウンドチェックを経て、登場したと思う。これらの部品の多くは、残念ながらオーディオビジネスの縮小と共に姿を消した。

金子さんに関する興味深いお話はまたいずれ取り上げるつもりである。

 

次回は、また、サンスイのプリアンプの開発について、お話したいと思います。


金子英男氏ゆかりの優良部品
金子英男氏ゆかりの優良部品
 写真上(左から): ニッケミAWAケミコン,ニッケミAWDケミコン,太陽通信Λコン,シールド・充填スチコン
 写真下(左から): Uコン,Vxコン,ブチルスチコン,リケン抵抗RMA,リケン抵抗RMG


2010年8月11日掲載


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