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イシノラボ/マスターズ店長の連載

第1弾 日本オーディオ史

第56回 いろいろなオーディオアンプに引き続き携わった良い経験

A社でカラオケアンプのサウンドチューンに携わる

この頃(1990年代)から、カラオケが段々と盛んになってきた。当時は、カラオケソフトはLDであって、パイオニアは業務用カラオケ用LDチェンジャーで大いに儲けていた時代であった。
このプロジェクトのきっかけは、A社の香港営業部長が、これから香港でもカラオケが流行るから、A社としても用意する必要があるということであったが、社内で担当するところがなく、我々、アウトソーシングに仕事が回ってきたのであった。

私は学生時代、グリークラブに所属してコーラスはやっていた。けれども、カラオケは好きでなく、とてもこの仕事はやれないと思ったが、このような経験もしてみようという気になって引き受けた。

A社のプリメインアンプを、カラオケアンプ用の音質にしてくれれば良いとのことで、引き受けた。当時は、キー・コントローラーはまだなく、マイクアンプを搭載すれば、一応、カラオケアンプになるのであった。
さっそく、レーザーディスクで音と絵を出して、歌える部屋を用意してもらい、歌ってみた。スタンダードなジャズと演歌を課題曲として、検討をスタートしてみた。独りよがりにならないように、当時のカラオケアンプといわれる競合アンプを用意して貰った。

このカラオケアンプは日光堂が販売していたアンプで、日本マランツのOEM部門が設計・製造したものであった。日本マランツは、ほかにも、BOSEブランドのオーディオアンプのOEMもやっていた。
このカラオケアンプは、歌ってみるとなかなかマイク乗りが良く、歌っていても疲れなし、のどが枯れるような感じもなく、良くできたアンプと思った。
このカラオケアンプを測定してみると、周波数特性はフラットではなく、中低域にわずかな(+0.8dB程度)盛り上がりを示した。このあたりがカラオケアンプのキーポイントであるように感じた。
もちろん、カラオケ用スピーカも重要であり、カラオケ用は、やはりボーカル低域、特に100Hz〜300Hzあたりの再生能力に特長を付けないと歌い手が乗れないし、聞くほうも疲れてしまいそうな感じがした。
マイクはもちろんダイナミックで、当時効果がシュアーSM58のような高価なマイクは売れないので、プリモあたりのシュアーを目標としたマイクを作って貰いそれを使ったが、シュアーのような太く、乗りの良いサウンドにはイマイチであった。

始めると、それこそ、一つの回路を変更しては歌ってみるという有様で、昼間から、酒も飲まず大真面目で歌って仕事をしている様は、あとから考えると滑稽だったかも知れない。

この仕事は短期間でプロトタイプを試作して終了した。この経験は数年後、通信カラオケが出現したときに、カラオケ会社からのアンプ・スピーカの量産設計業務仕事(ギガネットワーク社)のときに大変役立った。それにDSPによるキーチェンジャーの開発の周辺に携わったことも、大変、視野を広げることに役立った。
また、私はアルコールをたしなまないが、飲めば、カラオケをやりたい方達の気持ちは理解できるようになった。演歌でも吉幾三の一連の作品はご本人の機微を捉えた名曲と思えるし、特に“酒よ!”は傑作で、今後、歌い継がれると思う。

それから、20年以上年月を経た現在、カラオケ業界は寡占状態になっていて、最近ではスペースを取らない小型化出来るDクラス(デジタル)アンプが主流になりつつある。歌い心地については、カラオケ会社には、それを評価する人材がいるが、それよりも、やはりスペースの問題が最重要と言われているようだ。
日本から始まった“カラオケ”は、世界の“カラオケ”になった。

ハイエンドプリアンプ委託設計に携わる

A社でのプリメインアンプの仕事が終了して、しばらくして、B社の設計部長から会ってくれとのお話が入ってきた。
そこで、御茶ノ水駅で待ち合わせ、近くの喫茶室でお会いした。設計部長さんとベテラン設計者(T.Tさん)とのお二人で、いずれも初対面であった。

B社の、特にこのプリアンプの初代機は、故 長岡鉄男さんが愛用してくれて、このシリーズはB社の代表プリアンプであった。
そして、このプリアンプの3代目を製品化したいが、パワーアンプと一緒に設計したいとのことで、同席したベテラン設計者は、そのプリアンプに組み合わせるパワーアンプの設計担当とのことであった。
設計作業は、やはりB社内でやって欲しいとのことであった。B社の設計部門は2手に分かれ、ハイエンドアンプは、このチームでやるとのことであった。

仕事をする場所は、東海道線から乗り換えて私鉄沿線であった。何とか通える距離であったし、B社の社風・社内風土は前回のA社よりも私に合っていそうであったし、ベテラン設計者のT.Tさんは、私の住まいとそう離れていない距離にお住まいで、妙に気心が合う感じがした。(もちろん、同年代であったせいかも知れない)

B社の量産設計システムはA社より進んでいないと感じられたが、オーディオに取り組むエンジニアとして姿勢がとても好ましく感じた。要は、サンスイの雰囲気と共通するものがあった。

増幅回路は、これまでのシリーズとしての連続性から同じような回路構成であったが、見直すことから始まった。まずはバラックでラインアンプの試作から始まった。組み上げて測定することになるのだが、私には、当時最高級の松下の¥125万くらいする超低ひずみのアナライザーを使わせてくれた。(周囲の方は松下のニードル式アナライザーを使っていた。) 所定のひずみ率特性はクリアできたが、興味深かったのは、採用するように指定された回路の初段位相補償方式は、通常では、差動回路の初段のホット、コールド間をCR回路で接続して、差動効果をある周波数から落として、NFB回路による安定度を確保するために行うのだが、B社の方式は、差動負荷抵抗にパラレルに施す方式であった。
また、フォノイコライザー回路は、これまでのシリーズを踏襲することになったが、MC対応は、MCトランスを採用すべきと主張したら、取り入れてくれた。MCトランスの依頼先はタムラ製作所であった。

さらに、これからはプリアンプといえどもバランス出力回路とすべきと主張したら、あっさりと採用してくれた。問題はバランス回路であった。

当時のサンスイC−2301では、非反転アンプ、反転アンプの組み合わせでバランス回路を構成したが、このプリアンプでは、いわゆる完全バランス回路を採用することになった。名設計者であるT.Tさんは、短期間で、2段差動回路で完全バランス回路を構成させて、確か、Σバランスバランス回路と当時はネーミングした。
全体のレイアウトは、上段はラインアンプ、下段はフォノイコライザー回路、入力切替ロジック回路として、左側は電源回路とした。
画像に示すように、MCトランスはDL103に準じた巻線比で、MCトランスを分解してみると、シールドはパーマロイ、コアはL型コア、バランス巻線タイプで、本格的であった。
電源トランスは日本巻線トロイダルタイプ、電源チョークの採用を進言したら採用してくれて、チョークもトロイダルタイプとなった。

意外な問題点は、プリント基板間の接続であった。B社は日本圧着端子のVHコネクタを多用していたが、シールドケーブルでプリント基板間を接続するとなると、同じような3ピン端子になることであった。その区別には、B社はメーカーに特注して、標準の白に加えて、クロ、アオ、アカの4色を揃えていたので、色別すればケーブルを差す工程で作業員が間違える可能性がない。賢明な方法と思った。
このようにして、割と順調に、充実した仕事が出来た感じで過ごせた。
この高級プリアンプに組み合わせるパワーアンプはハイパワーの大型機で、設計は前述のT.T氏であった。

B社での仕事場所には“港町(みなとちょう)13番地”という電柱が立っていた。さあ、どこでしょう!?

以後、この仕事が御縁で、東北の事業部からの仕事が入ってきた。

ハーフサイズコンポのうちのプリメインアンプ

CDプレーヤー、チューナーとのハーフサイズで、それなりに売れたコンポであった。これもスムーズに仕事は進んだ。

イギリス向け戦力機種、プリメインアンプの改造設計

サンスイ在籍当時も、評論家“マーチン・コラムス”さんは“ハイファイ・チョイス”というオーディオ誌に絶大な影響力を持っていて、彼が気に入ってくれないと良い評価が取れない事情は、A社においても、このB社においても同様の事情を抱えていた。
彼の推奨回路を採用すれば、かなり評価は上がるということで、イギリスで販売中のプリメインアンプを改造設計してくれとのことであった。
イギリス人はケチであるから高価なアンプは絶対に売れない!50Wクラスの薄型アンプを改造することになった。やはり、推奨回路は、初段差動で良いが2段目は差動回路はやめて、通常の回路に変更することであった。その変更でDC安定度が少し悪化するが、何とかなるようにして、改造設計仕事はこなした。(初段のDC安定度をキープすれば、実用的に問題なかった。) 改造の結果、このアンプの音質は、けっこう隈取のある、個性的なものになった。ある意味、パワフルになった。
当時、P社もイギリス向けに同じような状況にあったということを聞いた。

アンプ内蔵サブ・ウーファのアンプ部設計

当時、次第にAVということが世界的に普及する状況であった。海外向けには、複雑な結線を必要とするAVアンプが対米向けの主力アンプになってきた。
この仕事は16cm程度のウーファを小型のボックスに入れて、低域をブーストして低域を増強するもので、国内向けであった。狭いキャビネットスペースにアンプを組み込むことは大変で、温度上昇対策が大変であった。
やはり、サブ・ウーファには、小型、高効率、ハイパワーのDクラス(デジタル)アンプが適していると思ったが、当時は、まだDクラスに使えるMOSFETも充分でなく、ドライブICもICメーカーで開発に取り掛かったばかりであった。


MCトランス フォノEQ部分
MCトランス、フォノEQ部分です。

トロイダルインダクタ
ほこりがありますが、トロイダルインダクタです。

ブルーの特注品3ピン端子
組立現場でVHコネクタと間違えないように、通常は白ですが、これはブルーの特注品です。


つたない文章をお読みくださってありがとうございます。まだ、続きます!


2013年 6月22日掲載


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