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イシノラボ/マスターズ店長の連載

第1弾 日本オーディオ史

第76回 500Wパワーのサブウーファ用Dクラスアンプ“DT-500”開発

ビジネスチャンスを考える
はじまり

K社向けOEM、Dクラスアンプ搭載、150Wサブウーファ設計の仕事が落ち着きつつある頃、オーディオ誌“ラジオ技術”の編集部から、トランスのタムラ製作所について書いてくれとの原稿依頼があった。
特に内容には制約はなく、自由に書いてくれとのお話であった。“ラジオ技術”には、サンスイ時代、そして、その後も、何かと書いていた。特に、AU-111の復刻版のもとになった試作アンプではそれなりにサンスイを動かすサポートとなったし、それ以外は自由な選択で、過去の名演、優れた録音、それに廉価CDの紹介記事を3年ほど書いていた。
タムラ製作所は短期間であったが、私が在籍していた会社であった。その頃のトランス設計理論、設計の実際、ノウハウ、他社OPT(ラックス、サンスイ)との比較解析、MIL規格(防衛庁納入品)のお話、それにタムラ逸也社長(現、会長)のトランスに掛ける意気込み等を書いた。

その“ラジオ技術”が発行されてから2週間くらい経った頃、“ラジオ技術”編集部から、タムラの方からTELがあり、私と話をしたいということで、TELでコンタクトして欲しいとのことであった。
その方はO・Mさんと言い、私の大学の先輩でもあった。
さっそく、TELしてみた。何と30年以上の年月が過ぎていた。O・Mさんは“よくぞ、タムラのことを、情熱を持って書いてくれた。ありがたい”との話であった。そのTELだけで終わらず、タムラに来て、お話しようということであった。そこで、特に具体的なことはなかったと記憶している。
私は懐かしい気持ちで、その1週間後、タムラ製作所本社(練馬区、大泉学園)を訪問した。当時のままの道筋をたどると、当時のまま社屋が見えてきた。

Dクラスアンプの開発開始

先輩O・Mさんは、満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。
O・Mさんはタムラの役員であったが、定年で退任されたばかりであった。この時点で、タムラが創業75年を迎えるので、記念書籍(タムラ75年史)を編集しているところということであった。
話題は、昔懐かしい話から、タムラの現況の話となった。タムラの経営は中国生産が主体であった。
売上は上がるが、利益が薄いとか、鉛フリーの時代となって、業務用半田付け装置、半田関連事業が良好であったという。また、オーディオ用トランス売上は大きくないが、タムラのシンボルイメージであるから、これはやめられないし、トップ水準を維持したい。また、プロ・オーディオ部門では放送局、ホール向けのミクシングコンソール製はずっと継続しているという。

そのうち、“何か、新規事業が欲しい!”とO・Mさんはつぶやいた。
私が気軽に“これから、発展するDクラスアンプはどうですか?”と言ってみた。
“それは面白い!実現可能!?”とO・Mさんは乗ってきた。“K社ブランドの150Wサブウーファの量産設計を終えたところです。”と経過を説明した。
O・Mさんは大変興味を持ってくれて、“タムラ創業75周年記念として、真空管アンプを75セット、限定発売する予定で進行している。真空管アンプと技術的に正反対なDクラス(デジタル)アンプをタムラとして開発するのも面白い!”と言ってくれた。

そういっても、タムラのオーディオ界における意義は、オーディオ用トランスくらいだけであった。放送局、ホール用ミクシングコンソールにしても、受注カスタム生産であった。
要は、ビジネスとして成立するかがタムラにとって難しそうであった。けれども、当時はマルチメディア時代と言われ、AV機器ビジネスは特に海外、それもアメリカではホットであった。
タムラはワールドワイドに支店、支社網を持っているが、AV分野でうまく機能するかは“?マーク”であった。

O・Mさんは75周年記念出版を監修させたら、タムラをリタイヤーとのことであった。けれども、O・Mさんは3代目社長の田村直樹氏の信任は厚いらしく、“それでは、せっかくのビジネスチャンスだから、早い方が良い!”と言ってくれて、“田村直樹社長と面談してくれないか?”と言ってくれたので、私は快諾した。

数日して、O・Mさんから、田村社長とのアポイントが取れたとのTELが入った。
そして、大泉学園、タムラ本社の近くのウナギ屋で会うことになった。
タムラサイドからは田村社長、秘書課長、O・Mさん、そして私の4名であった。

田村直樹社長は東大卒、10年近く、他社の上場企業でビジネス経験を積み、3代目の社長に就任したとのことであった。田村社長はクレバーで話の理解が早く、そして、その場で、“それでは、タムラとして、サブウーファ用Dクラスアンプを開発しよう!”と決断してくれた。そして、“販売先等のリサーチは開発に併せて、営業部門も動いてくれ!”社内側の方に言明した。

タムラからは、とりあえず、業務概要とおおまかなスケジュール、見積りを出してくれとのことになった。私は少し慌てた。そんなに早く話が決まるとは予測していなかった。
だから、そのあとのおいしいうな丼も食べた気がしなかった。また、O・Mさんはしばらくして、リタイヤ―してしまうので、それも不安であった。O・Mさんは“Dクラスアンププロジェクトの応援団になるから!”と精一杯な言葉を言ってくれた。やはり、先輩はありがたいと心から思った。

Dクラスアンプ開発の具体的進行

タムラの研究開発部で具体開発が進むことになった。
タムラ側の開発責任者はO・Yさんとなった。O・Yさんはスイッチング電源の設計においては業界でも良く知られており、タムラ社内においてもトップエンジニアであった。
早速、開発コンセプト、仕様について話し合った。
そのとりあえずの方向は以下のようなものであった。

  1. タムラは民生セットメーカーではないから、Dクラスアンプをタムラブランドで販売する可能性はない。
  2. 国内外のAV・オーディオメーカーにサンプルを製作して、売り込みを図る。
    但し、タムラ社内の営業体制はそうはなっていないから、サンプルができそうな時点で営業部門に社内アプローチを計り、営業部門に動いて貰う。
  3. 今回のプロジェクトはDクラスアンプだけでなく、オーディオ用スイッチング電源販売を目指す。
企画・仕様検討

さて、当時はハイパワー化の方向であった。海外では、ヨーロッパのICE POWER(アイスパワー:デンマーク)(【写真1】参照)が自社開発したDクラスアンプユニットが1kWを出すということで話題になっていた。

また、IRに在籍し、トップエンジニアになっていたH・JさんにIRのDクラスアンプ関係の様子を聞いてみると、IRは優れたDクラス向けゲートドライバICを開発中である。けれども、あと1年以上、製品化には時間が掛かると言った。
私はある程度、IRのゲートドライバに期待していたが、あきらめざるを得なかった。

海外について調べると、トライパスの20Wアンプが評判が良く、さらに、ハイパワー向きのゲートドライバICを近々製品化するとの情報が入ってきた。
トライパスについて調べてみると、ドクター“トライパシー”(インド系アメリカ人)が開発・設立したDクラスアンプ新興会社であった。アメリカ西海岸に立地していた。
さらに、近々、最大パワー何と500Wが可能なゲートドライバを開発・製品化するとの情報が入った。
早速、日本国内に代理店がないかと探ってみると、新横浜に“マクニカ”という元気のよい発展途上電子部品販売会社がトライパスの代理店になったばかりであった。タムラ経由でコンタクトすると、すぐ、セールスエンジニアが来てくれるとのことになった。
“マクニカ”の担当エンジニアによると、20W~50WレンジのDクラスアンプは良く売れているとのことであった。そして、噂のゲートドライバは量産開発の終盤を迎えつつあり、量産試作サンプルを1~2か月後には提供できるとのことであった。

O・Yさんも私も、大いにそのゲートドライバICに乗り気になった。
暫定の仕様書を貰い、紙上計算してみると、フルブリッジ構成で、500Wはクリアしそうであった。また、終段に採用するMOSFETを探すと、STマイクロにマッチするデバイスが見つかった。
そこで、アンプ部分の放熱設計、基板設計の検討に入った。アイスパワー並みの小型で、80mm×100mm程度に収まりそうであった。従来のアナログアンプでは考えられない小型化、高効率が実現できそうであった。ヒートシンクはアナログアンプなら20W程度用のヒートシンクで500Wが出る計算値になった。

一方、パワーアンプに電力供給する電源はトランスでは巨大、超重量になってしまい、やはりスイッチング電源であれば、小型化できそうであった。また、スイッチング電源であれば、商用電源電圧対応は電源トランスのようにシビアな仕様にする必要もなかった。
O・Yさんはこの程度の仕様なら、充分、製品化できると言ってくれた。
電源部は新開発スイッチング電源を採用する方向になった。

Dクラスアンプ全体の形は、サブウーファのキャビネット裏側に取り付ける方法を考えた。この形はK社ブランドのサブウーファで製品化実績があったので、全体を小型化できれば500Wアンプとして製品化できそうな見込みがついてきた。
もちろん、サブウーファをドライブするコントロール回路は、再生低音周波数帯域を連続可変(-24dB/octタイプを採用)できるように考えることにした。

トライパスのゲートドライバ採用、試作検討スタート

しばらくして、トライパスのゲートドライバが入荷した。部品名はTA-3020と印字してあった。 このゲートドライバは45ピン構成の大型ICで構成されていた。添付していた仕様書から、Dクラスアンプ部の回路図を作ってみた(【図1】参照)。

このゲートドライバICのスイッチング周波数は600kHz以上の高周波、また、出力段では大電流が流れるので、プリント基板設計は、MOSFETとMOSFETドライブ回路との配線距離を最短にする必要があった。
また、小型化するには、CR部品の大多数は小型表面実装部品を採用する必要があった。当然、プリント基板は両目スルーホール採用となった。
パワー段のパワーMOSFETは内部抵抗、耐圧、ドレイン損失等から検討し、STマイクロ社のSTM34NB20を採用することにした。
なお、このゲートドライバはフルブリッジ構成になっていて、1台あたり、パワーMOSFETは4個必要になった。

さて、500Wパワーを出すにはアンプ電源電圧はフルブリッジ構成だから、ハーフブリッジ側のDクラスアンプの負荷は4オームになる。ここから計算すると、最低でも、±44.72V以上必要であった。500Wパワーを保証するには、MOSFETの内部抵抗、出力インダクタの損失、配線ケーブル、SPケーブルDC抵抗損失を考慮すると、数ボルトの電圧マージンを取る必要があった。スイッチング電源の出力電圧は±55Vに設定した。スイッチング電源は出力電圧が安定化されるから、Dクラスアンプの電源設計が楽になった。
全体の回路構成、仕様を【図2】,【図3】に示すように作成した。

開発検討に没頭

この段階になって、検討場所はタムラ製作所、坂戸事業所になった。自宅の千葉・検見川浜からだと、池袋で東武東上線に乗り換えて、若葉下車、徒歩10分と遠かった。
車で行くと、中央高速、坂戸出口で降り、そこから10分かかった。
おおよそ、9時頃に坂戸事業所に到着、帰りは21時頃まで検討した。

作業環境は良好で、作業場所、工具、等も特に不備はなかった。また、30年ぶり以上で同期入社の方にも会えたし、また、山水在籍当時、MCトランスでお世話になったY・Yさんがタムラに勤務していた(現在はマスターズのトランス関係でお世話になっている。オーディオトランス設計の権威)。
試作基板設計においては、CTS時代から、現在もお世話になっているプリント基板会社のNP社の協力もあって、迅速に試作設計したプリント基板が入手できた。人脈とはありがたい!
プリント基板への平面実装部品のハンダ付け部品が1×1.2ミリと小さく、シニアには作業がきつかったが、何とか、拡大鏡を使って作業した。大型のフィルタインダクタ、パワーMOSFETを取り付けて、Dクラス基板ユニットはでき上がってきた。

さて、Dクラスアンプの出力にはオーディオ出力にスイッチング周波数成分がインダクタでその成分の削減を図るものの、混じり合って出てきてしまうから、通常のひずみ測定では、アンプ自体のひずみ測定ができない。
聴覚は高周波成分が聴こえないから、ひずみとしては聴こえないからそう問題にはならない。
Dクラスアンプ出力にスイッチング高調波成分を除去する必要があった。そこで、24dB/octのフィルタセットを作り、ひずみ測定することにした。
【図4】に示すように、500Wで0.9%以下の値が得られた。
デッドタイムコントロールを調整して、アイドリング電流を増やす方向とするとひずみデータはさらに改善されてくるが、ゲートドライバICが発熱してくるので、この程度の性能が良さそうに思えた。

Dクラスアンプとしての基本動作はクリアできた。
あと、再生周波数レンジをコントロールするフィルタ回路を設計し、出力ショート/温度上昇に対するプロテクト回路をも設計した。これらの回路はK社サブウーファアンプ設計経験が役立った。
サブウーファとしての基本性能はうまくいった。

また、専用スイッチング電源は、O・Y氏の設計により、試作を重ねて、500Wパワーに対しても短時間(30秒程度)なら問題なく安定に動作した。さすが、O・Yさんであった(【写真3】参照)。

Dクラスアンプの全体のかたちは【写真4】に示すようなかっこうになった。

海外安全規格のクリアへの努力

私とO・Yさん2人だけのDクラスアンプ開発プロジェクトでは、マンパワーが不足であろうと、大学院卒業の新入社員、K・Mさん(26歳)が加わってきた。
K・Mさんはオーディオには詳しくなかったが、磁気関係専門の研究室出身であったので、電磁波ノイズに関しては戦力になった。それに若いだけにパソコン関係には強く、また、オーディオ回路の理解は、クレバーだけに呑み込みが早かった。(残念なことに後日、K・Mさんはホンダの研究所に転職した。)

さて、アメリカ国内での販売を可能にするには、FTC電波規格をクリアする必要があった。
この試験はFTC規格用の専用アンテナで、Dクラスアンプからの輻射(漏れ出す)電磁波ノイズを受信して、その成分、電磁波ノイズレベルがFTC規格で定められた数値以下でなければならない。
この試験装置は、いわゆる電波暗室とよばれる電磁波をシールドする専用建物内で、専用試験装置で、ギガ帯域まで測定できる設備が必要であった。 パイオニア、ケンウッド等の大手企業は電波暗室をもっているが、その設置費用は1億円以上かかるので、簡単には用意できない。タムラにはスイッチング電源用の国内安全規格用の試験設備はあったが、電波暗室の設備は当然無かった。

外部で試験できる設備を探したところ、時間貸し電波暗室(埼玉県公立試験設備)を見つけた。混んでいたが何とか予約して、まずはそこでFTC電波テストを行ってみた。
FTC電波試験はアンプから10m距離にアンテナを置き、アンテナ高さを動かして、電波垂直・水平方向について、輻射ノイズ成分を測定周波数をパラメーターに測定する方法で、測定器は超高価、また、測定方法はパソコンと連動して、測定データを記録紙の書き出す方法であった。
最初のテストでは、そのままでとてもクリアできそうもない結果であった。輻射ノイズが、Dクラスアンプ外に漏れ出ているのであった。
アンプ全体を覆うケースは硬質樹脂製、外側のメタルプレートは鉄製であった。K社のSW150ではパワーが少ないせいか、クリアできていた。
500Wパワーではクリアできないことが分かった。いろいろと知恵を絞って、硬質樹脂ケース全体を電波シールド塗料で塗ってしまう方法を採ってみた。

次の試験設備は公立試験場所の予約が取れず、やむなく、茨城、鹿島地区の電波測定設備で検討することにした。鹿島地区は外来ノイズが少なく、外来ノイズは航空機の無線電波程度であった。
そこで、1日掛けて出かけ、再度、テストをおこなった。その電波シールド効果は抜群で、もう少しでクリアする水準であった。あと、アンプ出力ケーブルに、フェライト磁性体によるフィルタを設置にしたり、さらに輻射ノイズ削減効果が確認できた。

合格見込みがついてきたので、合格証明を試験機関からもらうべく、最終テストをおこなうことになった。別の試験機関会社の試験設備で合格認定試験をおこなうべく、泊まりがけで出かけた。
3回のテストでFTC電波規格をクリアでき、合格証明をいただいた。FTC電波規格クリアの検討時間、試験費用は大変で、現在でも、FTCノイズ試験は手が掛かると思う。

また、アメリカ国内で、ある程度で数量を販売するにはUL安全規格取得が必須であった。
K社ブランドのDクラスアンプにおいては、私の手を煩わせることなく、エステックサイドでうまくUL安全規格をクリアしてくれた。
DT500では、我々主体でやっていかなくてはならなかった。
UL認定試験はアメリカのUL認定機関にサンプルを送り、“あーだ、こーだ”と改善事項を指摘され、UL規格試験合格は面倒な仕事であった。 ようやく、2000年を超えたころから、UL認定委託会社が日本にできていた。これは幸運であった。その会社は横浜(新子安)にあり、修正作業もその会社にいき、じかに話を聞き、データを見て、対策を打てた。また、認定試験でセット(10台以上を用意)が壊れてしまっても、その場で我々が修理・復元して、改善して再提出して、クリアする作業が連続してできた。何回も横浜に通うことで疲れたが、迅速にUL規格はクリアできた。

組み込むサブウーファの検討

我々はサブウーファアンプを開発するのだが、果たして、組み合わせるスピーカユニットとの整合性の実績を作っておいたほうが良いのではという考えが沸いてきた。
国内ブランドはタムラと組むことは難しいと思われた、その理由はすでに国内ブランドはAV機器を海外生産する方向を向いていた。
AV機器の本場、アメリカ国内でスピーカビジネスをしている会社と共同開発するかたちができれば、よりビジネスの実現性が増してくるように思えた。
タムラはアメリカ国内に支社、出張所を構えていたので、当たって貰ったが、トランスやハンダ材料やACアダプタ関係の小物部品についてのつながりしかないことが分かった。

そこで、盟友、アメリカ在住、アメリカサンスイOBのI・Fさんに相談したところ、アメリカ西海岸LAで頑張っている“フォスターカルバー”という小規模会社に人脈があり、コンタクトしてみると、アクティブに活動していると言ってきた。
この会社は、名前の通りフォスター電機の関連会社のかたちになっていた。そのメインのSPユニット設計者S・Sさんを紹介してくれた。

S・Sさんは、国際電話でお話しすると、とても信頼できそうな誠実な人柄を感じさせた。
S・Sさんは“それならば、38cm強力ウーファユニットとキャビネットを送るから組み込んで検討して欲しい”と言ってくれた。また、日本でのタムラとのコンタクトも必要なので、”フォスターから転籍しているA・Kさんが一時帰国するので、タムラに行かせるから、そこで、さらに詰めていきましょう!“という協力的な申し出であった。

2週間ほど経って、フォスターカルバーから、38cmユニットを付けた100リットル程度のキャビネットが送られてきた。
その38cmウーファは、物凄い耐入力がありそうな頑丈な構造であった。そこで、注意しながら100Hz信号を入れていくと、すごいサウンドが出てきた。まだ、いけるだろうと、さらに入力すると、SPユニットから白煙が上がってきたのですぐ連続波の試験は中断した。次は音楽信号(イーグルスのライブ盤)でテストしてみた。この音源は60秒後あたりから、迫力あるエレキベースサウンドが収録されており、当時は低音サウンドテストに使われた。さすがに、この強力ウーファユニットと500Wサブウーファアンプの威力はすさまじく、タムラの視聴室の外にも鳴り響き、社内からクレームが出たほどであった。

その1週間後、A・Kさんがタムラに来てくれた。タムラ側は我々プロジェクトだけでなく、タムラの海外営業担当者もA・Kさんとのミーティングで参加してくれた。
悲しいかな!タムラはオーディオ会社として資質ある人材はなく、このサブウーファ海外ビジネスは無理と思った。 それでは、私の人脈でやるだけのことはやってみようと、アメリカ在住のI・Fさんはアメリカでのオーディオビジネスには精通しているので、ヘルプして貰うことを話したら、何とか協力しようと言ってくれた。一方、フォスターカルバーのS・Sさんは、3か月もすると、WCESがラスベガスに開かれるので、視察、商談に来た方たちをフォスターカルバーのプライベートデモルームに招き、視聴してもらい、売り込んでみたらどうか?というアイディアを言ってきた。私も山水、CTSの経験から、そのアイディアには賛成であった。但し、それだけでビジネスがうまくいくとは思わなかった。そのあとのフォローが必須なのだ。

A・Kさん、タムラ関係部署とのミーティングで、私は、WCESに動作サンプルを持参して、フォスターカルバーのデモルームでディスプレイとサウンドデモをやったらと提案した。ビジネスになるかどうかの可能性は50%くらいと無理した考えは言わなかった。タムラサイドはこの話に賛同してくれ、実行することが決まった。

あと、2か月の検討期間であった。送られてきたキャビネット内に38cmウーファを取り付け、リアサイドにDT500を取り付けて、実働テストしながら検討を始めた。
始めは、20~500Hzのサイン波をスイープさせながら、音を出していった。
大音量になると取り付け部から空気漏れが生じて、このあたりをパッキングで防止する。さらに、大音量を入れるとウーファから白煙が上がってきた。慌てて信号を切断して、ウーファのボイスコイルをチェック。幸い、大丈夫であった。

その後、サブウーファテスト用音源として、“イーグルスのライブAV音源”では、本当のギターベースサウンドが出てきたように感じた。
また、戦争映画の爆雷投下シーンでは、恐怖感を覚える重低音を感じた!
連続動作、温度上昇、ショートテスト等の安全性に関する検討も細かい回路の手直しを加え、段々と完成度が上がっていた。

12月中旬までにアメリカに展示/デモ用に完成したサンプルをフォスターカルバー社に送った。
私とO・Yさんの2名は年が明けて早々、アメリカ・ラスベガスに向けて旅立った。もちろん、安いANAエコノミー席であった。

ラスベガスでのサウンドデモとその後

ラスベガスへは山水、CTSの頃から数えて、今回、5度目の訪問であった。ラスベガスには、アメリカサンスイOBのI・F氏に来てもらうように頼んだ。
出張費用はタムラで負担してもらったが、ホテル代はショウの会期中は上がっているので、部屋は広いから、I・Fさんは私の部屋に泊まって貰うことにした。ホテル代は部屋単位料金なので、費用はそれなりに節約できた。

タムラのO・Yさんを、フォスターカルバーのS・Sさん他スタッフ、I・Fさんを紹介して、サウンドデモの用意をして、まずはスタッフの皆さんに視聴してもらった。視聴に際しては大型TV画面にAVソフト(例のイーグルスのライブ)を観ながらのヒアリングになった。さすがに、タムラで視聴したときよりも、ワンランク上のAV効果があった。
スタッフの皆さん、これはいけそうな表情を浮かべていた。ビジネス的には、いくらサウンドデモで良くても、納入価格等は適価でなければ、求まらない。
私は、一応の原価計算してきていたが、どこで生産するかで、大きく変動する。タムラとしては、中国生産は無理としても、また、アメリカは原価アップで無理としても、カナダとかメキシコ生産ならば、ビジネスの可能性はあった。

WCESが開催され、フォスターカルバーのプライベートショウルームにお客さんが来訪してきていた。これらの応対はアメリカ在住の長いS・Sさんが引き受けてくれた。
ほぼ3日間のデモができた。WCESの終了間際のフォスターカルバー、I・Fさん達のミーティングでは、何と、JBLが興味を示し、サンプルはJBL社内でデモテストするというので期待を込めて、預けた。当然、甘い話ではなく、カナダのアンプメーカーからのサンプルとの比較テストということであった。
あとは運に任せた気持ちであった。

日本に帰国してから、フォスターカルバーから、JBLはタムラを選ばず、カナダのアンプメーカーとOEM契約を結んだとのことであった。
がっくりきたが、私にとって、ここまでが精一杯の活動であった。
その後、タムラは会社として、アメリカ国内のオーディオOEMビジネスは難しいと判断したと言う連絡を受けた。
あとはそのままではやりっぱなしになるので、設計・開発報告書を作成し、タムラに提出した。タムラで試作したサンプルは12台のうち、記念に2台引き取った。

そのサンプルをマスターズ工房で聴いたが、なかなかのパフォーマンスであった。
また、DT-500をフルレンジアンプと改造して聴いたが、ピュア・オーディオ用としては、少しひずみ率はパワーが上がれば増えるが、1W程度のレベルでは充分楽しめた。
このプロジェクトは11か月を要した。


長たらしい文章、お読み下さってありがとうございます。まだ、続きます!


【図1】DT500、Dクラスアンプ部回路図
【図1】DT500、Dクラスアンプ部回路図

【図2】DT500回路構成ブロック
【図2】DT500回路構成ブロック

【図3】DT500仕様書
【図3】DT500仕様書

【図4】DT500Dクラスアンプ部ひずみ特性データ
【図4】DT500Dクラスアンプ部ひずみ特性データ

【写真1】ICEパワーのDクラスアンプユニット
【写真1】ICEパワーのDクラスアンプユニット

【写真2】トライパスゲートドライバを採用したDクラスアンプユニット
【写真2】トライパスゲートドライバを採用したDクラスアンプユニット

【写真3】DT500スイッチイング電源仕様
【写真3】DT500スイッチイング電源仕様

【写真4】DT500試作サンプル
【写真4】DT500試作サンプル

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