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アンプの進歩を導いたJBL SA600アンプ回路をベースに創ってみた

始まり

今から、50年近く昔でしょうか?サンスイ名人エンジニアのY・Mさん宅を訪問したときからです。大変、残念なことに、Y・Mさんは今年8月に亡くなりました。私はずっと、Y・Mさんのアドバイスやヘルプを受けました。私にとって恩人でした。そのような感慨に深けながら、思い出します。
Y・Mさんのオーディオシステムは、スピーカーがアルテック・バレンシア、アンプは勉強のために購入したというJBL SA600プリメインアンプでした。
そのアンプはアーノルド・ウルフがデザインしただけに大変バランスが取れた美しい姿でした。そして、そのサウンドは故、瀬川冬樹さんが感涙にむせんで、“ステレオサウンド”誌に記述したように、私にとっても、これまで聴いたことにないサウンドであり、素晴らしい体験でした。
その頃、私はスピーカーの設計者で、SP-150を担当していました。
サンスイの仕事場では、スピーカーヒアリング用アンプはサンスイAU-999でした。Y・Mさん宅で聴いた、エッジのきいた切れ味のあるサウンドはどうやっても出ませんでした。
アルテックのバレンシアは、大型ウーファにホーンドライバーの2WAY、それにマグネットは磁気抵抗の低いアルニコでしたから、これは敵いません。

JBL SA600アンプに行き着く

そして、そのとき、気になったのは、JBL SA600でした。ちょうど、そのころ、JBLの輸入代理店がサンスイでしたから、回路図等のサービス資料は入手できました。
それを眺めると、AU-999よりもはるかに進歩していました。
まず、±2電源、入力差動回路、前段は差動2段(一部、ブートストラップ付)、全段直結、コンプリメンタリー構成、Tサーキット、DCアンプ構成でした。
SA600が日本のアンプメーカーに与えた影響は大きく、サンスイではその後発売されたAU-9500は相当影響を受けていました。その後、AU-666で、さらに、さらに、サンスイアンプ回路は進展しました。
ところで、どうして、スピーカーメーカーのJBLがこのような先進的なアンプを1960年代に実現できたのでしょうか?
JBL内でエレクトロニクスも詳しいエンジニアはバート・ロカンシーであったことは知っていました。けれども、すぐには、SA600アンプに結び付くことは考えられませんでした。

後日、元パイオニアの木下正三さん(レイ・オーディオ代表取締役)から伺った話ですが、バート・ロカンシーがJBLから離れて、一時、パイオニアのエンジニア達に、スピーカーの技術習得をさせるために講師に来ていたそうです。とても高度な講習で、ほとんどの方が付いていくことができなかったそうです。素晴らしく、クレバーな木下さんはバート・ロカンシーの一番弟子でありました。
バート・ロカンシーはアンプ回路にも詳しく、真空管アンプ時代にすでに差動入力真空管アンプを設計、製作していたそうです。
この回路を半導体アンプに置き換え、最新回路を実現したのはSA600アンプ回路ともいえます。

(注)実際は、SA600の前に、JBLスピーカードライブ専用アンプとして、SE-400Sが先に登場していました。

絶対位相のはなし

SA600回路の私にとっての密かな注目点は、その回路が反転アンプ構成になっていたことです。
反転構成アンプとなると、NFB演算は抵抗同士でのサミングとなり、初段差動回路は非反転アンプに必須な定電流回路は特に必要なく、無ひずみ回路となります(あっても良いが)。
JBLスピーカーの極性は他のスピーカーと反対(近年、他と同じになった)ですから、反転アンプでJBLスピーカーを増幅すれば、他と同じになるわけです(絶対位相に戻る)。
当時、そんなことには関係なく、JBL4343、4344は物凄く売れました。多くのアンプは非反転アンプでしたから、入力されたオーディオ信号とは反対極性でスピーカーは動作するわけです。
それが、ずっと続いて、JBLが極性を他と同じ(+信号を入力したら、振動板が前に出る!)になったのはつい数年前でした。
このような極性問題は、海外ではABUSOLUTE PHASE(絶対位相)と言います。
そうそう、今月の“管球王国”を眺めると、絶対位相のヒアリング記事が載っていました。テスターは300Bで有名な新さん、オーロラサウンドの代表 もう1名の方の3名でした。その記事では極性切替ヒアリングで、ある程度のサウンド差異は感じたとレポートしています。
一方、マスターズアンプの愛用者のMさんによれば、音源をヒアリングすれば、どちらが、本来の位相かを自分なりに聴き分けられるそうです。
私は残念ながら、自信を持って言い切ることができません。音源製作側では、絶対位相は入れ替える可能性は充分あります。
例えば、アナログコンソールならば、ミックス時に加算回路で、絶対位相は反転します。また、バランス回路で、2番、3番を入れ替えれば、絶対位相は入れ替わります。
このあたり、オーディオサウンドに絶対の自信を持っている、盟友、West-Riverアンプの川西哲夫さんに伺ったところ、それほどの違いは感じないと言われました。
マスタリングエンジニアである息子さんにも聞いてもらったところ、特に関心がないとのことでした。
スピーカー的には、最初の立ち上がりで、コーン紙が出るのと、引っ込むことは、リスニングルームの瞬間的微少気圧変化はそれほど人間の聴覚では聴き取れないのでしょう。
他の哺乳動物では聴き分けることができるのかも知れません。アンプ的には、入力や、接続するスピーカー極性を反対にしても電気的測定では変化はありません。
そうなると、バランス信号処理で、ヨーロッパ規格ではホット2番、アメリカ規格のホット3番になりますが、それほど、この違いに気を使う必要がないことにもなります。オーディオの面白いところです。

SA600アンプ回路でアンプを作ってみる

さて、話を本題に戻します。最近、アナログレコードを、終活を兼ねて、整理しようと選別がてら聴き始めると、そのサウンドは当たり前ですが、CDサウンドにはない、聴き慣れた、忘れていた、フレッシュなサウンドが聴けるのです。S/N比、Dレンジの大きなサウンドのCDは良いはずなのに、何かおいしくない成分が残っているように感じるのです。
マスターテープのS/N比は頑張って、60dB、1回、ダビングすれば、S/N比は3dB以上悪化し、ひずみも増えます。
そのような音源をアナログレコード化すれば、S/N比は良くて50dBが限度、カートリッジのセパレーションは良くて25dB(1kHzで)です。それにカッター、カートリッジのトレーシングひずみも結構あります。それなのに、このようなサウンドは単なるアナログファンの記憶、拘り、思い込みだけとも言い切れないように感じます。
そのような感情がいつしか、SA600回路をベースにして、アンプを創ってみようと思い立ちました。

パワーアンプ部回路

SA600のパワーアンプ部のオリジナル回路を【図1】に示します。
眺めてみると、非常にシンプルです。けれども、±2電源、純コン(コンプリメンタリー)構成、DCアンプ、差動入力、2段増幅構成がそこに詰まっているのです。パワーステージは3段ダーリントン構成になって、かつ、電源電圧にファイナルにいくにしたがって、高くする(下駄をはかす)ようにして、パワーが出るようになっています。意外と見逃すのがダーリントン段のエミッタ抵抗がNPN/PNPトランジスタ直結されており、出力から切り離されていることです。この狙いはトランスジスタの高周波帯域の電荷蓄積を引き抜き、高域のひずみ率改善を目指していると思われます。
また、一大欠点として、プロテクション回路は不備で、電源ON/OFF時には、それなりのショックノイズが発生することです。

整理して、まとめたパワーアンプ部回路

【図2】に今回製作したパワーアンプ回路図を示します。
パワーステージは電源積み上げをやめて、同一にしております。パワーは減りますが、電源構成がシンプルになります。それ以外、特に問題はありません。電源は高音質ブロックケミコンにフィルムコンを付加しております。
使用パワートランジスタはサンケン2SC4467/2SA1694で構成しております。このパワートランジスタの最大Icは8Aと大きな電流マージンがあります。

プロテクション回路は必要

プロテクション回路を【図3】に示します。電源ON/OFF時のショックノイズをリレーにて防ぎ、かつ、パワーステージに不具合を生じ、DC発生時は瞬時、スピーカーと切り離されます。安全です。

製作、完成、測定、ヒアリング

でき上がったアンプの周波数特性、ひずみ率特性を【図4】、【図5】に示します。ワイドレンジ、低ひずみ、高S/N比のアンプです。最大パワーは37W出ました。
ヒアリングはJBLアンプにはJBLスピーカーでと思い、4320を接続してヒアリングを始めました。もちろん、アナログレコードで聴きます。

始めは、当時、いや、今でもよく聴かれる名演We Get Request

オスカー・ピーターソン・トリオ、名レコーディングエンジニア、Val Valentinによる録音です。
冒頭のウッドベースのアルコ(弓引き)から、はっとなります。そして、軽快なピーターソンのピアノにドラムスが絡んできます。
切れ味、分解能、音場感はやはり、感銘を受ける演奏、サウンドです。特にピーターソンのころころとした歯切れ良いピアノ、ハイハット、スネアが気持ちよくリズムに乗ります。決して、重くならず、楽しめます。やはり、アナログレコードで聴く方がぴったりします。

フィメール・ボーカル(東芝EMI)

歌謡曲にも素晴らしいサウンドがあることを知らしめた名盤と思います。
冒頭の“アドロ”はスサーナ―の鼻息がセクシーに感じられます。それに、エコー等の味付けが抜群にうまく、同じ曲目の入った盤より、この盤におけるマスタリングが素晴らしいのが聴き取れます。
私としては、“雨の日ブルース(渚ゆう子)”がボーカルの捉え方、透き通ったサウンドが素晴らしく感じます。それに、少しハイ上がりのストリングスサウンドは、筒美京平のアレンジに素晴らしさをもじっくり感じ取れます。
名ミクサー、行方洋一氏の代表的名サウンドを聴きとれます。これは、真空管アンプより、半導体アンプ、特に、このSA600回路にぴったりマッチすると思ってしまいます。

スリラー(マイケル・ジャクソン)を聴きます。

今聴いても、名曲、名演、名録音と思います。クインシー・ジョーンズのプロデュ―スですから、オーディオ録音テクニックがあらゆるところに行き届いているのが感じ取れます。
マイケルの全盛期のボーカルはパワフルに聴き取れます。それにリズムセクションの切れ味、音離れの良いこと、これはCDでは聴けないサウンドと思いました。

最後にクラシック、サンサース“交響曲NO,3”

パイプオルガンとオケとが融合する最終楽章のすさまじさがやっぱり凄い、混変調は感じないです。

私の自己陶酔があるかも知れませんが、少なくとも、このSA600回路のパワーアンプは充分、楽しめると確信します。

【図1】JBL SA600オリジナル回路

【図1】JBL SA600オリジナル回路

【図2】製作したパワーアンプ回路図

【図2】製作したパワーアンプ回路図

【図3】プロテクター回路

【図3】プロテクター回路

【図4】周波数特性

【図4】周波数特性

【図5】ひずみ率特性

【図5】ひずみ率特性


パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”のバランス伝送・増幅

パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”は発売以来、多くのユーザーさんに愛用されております。末永くお使いいただけるよう願っております。
さて、バランス伝送はホット,コールド,そしてグランドの3線で行い、通常のバランス増幅はグランドを基準にします。
パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”は、上記方式のバランス増幅アンプに対応しております。
これまで、気が付かれた方はおられると思いますが、サンスイXバランス増幅アンプ、マスターズのZバランスパワーアンプやプリメインアンプでは、バランス信号入力を差動入力としてバランス増幅します。
したがって、グランドラインはプリアンプとは無関係になり、いわゆるグランドフリーでのバランス増幅となります。よって、グランドに関わる問題(ノイズ、電源極性など)はまったく関係がなくなります。

今回、パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”において、グランドラインとパッシブトランスのグランドとをフロート(FLOAT)して、マスターズZバランスパワーアンプに接続してみました。これまでは、グランドラインと接続されていました。
電気的特性はフロートでも、グランド接続しても、どちらでも、まったく変わりがないはずで、それは確認致しました。そしてヒアリングにおいて、いろいろ聴いてみました。
まずはバイオリンソナタです。これまでより、切れ味が増し、細かい表情、空気感がより感じ取れるようです。
次は、ジャズトリオです。ベース音階がよりくっきりして、さらに、ピアノの打鍵がジャズに溶け込んできます。
ドラミングも“そうだった!”とかというような細部が認識できる感じです。
けれども、微妙な差異ですし、私の聴覚ですので、何ともいえませんが、Zバランス増幅を活かすにはこのほうが良いようです。
ユーザーの方に余計な情報を与えるかもしれませんが、グランドフロートはバランス伝送(ホット,コールド)でおこなう意味から正しい方向と思います。
今後のパッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”のご注文においては、デザインスケッチのように、ご希望グランド選択スイッチを付加できます。価格は変わりません。
なお、パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”ユーザーの方で、グランドフロートをご希望の方はご連絡ください。リア面にて、スイッチ付加で対応致します。ただし、申し訳ありませんが、実費を少々頂きます。
回路は【図2】に示します。

最後に、私の知っているところでは、差動バランス入力で、グランドフロートでバランス増幅するのは“ソウルノート”のバランス増幅アンプと思われます。回路ブロックから眺めると、差動バランス入力の3段増幅アンプ構成と読みます。

【図1】MASTERS CA-999FBG/GF(予定) グランドフロートスイッチ装備の場合のフロントスケッチ

【図1】MASTERS CA-999FBG/GF(予定) グランドフロートスイッチ装備の場合のフロントスケッチ

【図2】グランドフロートスイッチ装備の場合の回路

【図2】グランドフロートスイッチ装備の場合の回路の回路図


フルバランス増幅真空管プリメインアンプ“MASTERS AU-203FBG/PSTAX”ユーザー様からの使用レポート

このたび、フルバランス増幅真空管プリメインアンプ“MASTERS AU-203FBG/PSTAX”(バランスドライブ/STAX端子付きモデル)を購入されたA・Sさんから、使用レポートの掲載許可をいただきましたので、参考になればと、そのまま掲載させていただきます。

本日 AM10:30頃に無事商品が届きました!
ウォームアップ後の試聴でハイエンドメーカー品の高級アンプでも中々得られない高い透明感をベースにコントラストのシッカリ乗った緻密さと躍動感を伴う音離れ良好な彫りの深い音像描写で生き生きした瑞々しい再生音は素晴らしいです。
カメラのレンズで言うと、高級大口径単焦点レンズの描写を彷彿させます。
本来はシンプルなネットワークの小型スピーカーを鳴らす為に購入したアンプですが、24db/octネットワークを使用した大形スピーカーで鳴らしても締り良く駆動出来ています。
STAX用出力もハイクオリティーでSRM-007tAを1ランク以上超える解像感と音場の広さを実現しつつクセの少ないサウンドで魅力大。
バランス入力を使うとさらにニジミの少ないスッキリしたサウンドで魅力アップ。
ボリュームのゲインも丁度良く色々な音源で適正音量を得やすいです。
うっすらベールを被り躍動感不足なサウンドの大手メーカー品のアンプは今後買うことは無いと思います。今後も宜しくお願いします。

MASTERS AU-203FBG/PSTAX

MASTERS AU-203FBG/PSTAX


電源問題とプリアンプのお話

電源事情

ここ20年以上、スイッチング電源、インバータ電源の普及によって、家庭用電源の正弦波が崩れて、正弦波のあたまが潰れています。
専門的には、コンデンサの作用によって、コンデンサに充電する時間(流通角)が静電容量が大きくなるだけ小さく、充電電流が大きくなります。
こうなると、オーディオアンプの整流回路でのDC出力はきれいな正弦波の場合より、取り出せるDCパワーは5~8%程度低下すると言われています。
ですから、整流回路のコンデンサーの静電容量はむやみに大きくしては逆効果になります。

アンプは交流分(リップル)の少ない、低インピーダンスの電源で動作させるのが必要とされます。そのためには安定化電源なるものが普及していますが、この回路はNFBを応用しているので、その動作について、アンプの静特性では測定差がでてきませんが、ヒアリングでは差異があると感じる方は少なくありません。
それに加えて、近年の携帯、スマホ通信の通信電磁波は、アンプの電源部に混入します。混入した場合のアンプが受ける障害はヨーロッパの電波試験で明らかになったように、悪影響(アンプのS/Nや、ひずみ率が悪化する)を与えます。
(電波障害に対する対策は50年前から、ヨーロッパでは要求され、この試験をパスすることがヨーロッパで販売できるアンプにとって必須事項となっている。)

ところが50年前から、電磁波対策をすると、アンプのヒアリング結果(音質)が悪化するのは、関係者の間では常識になっています。
このような事態を知ってか、知らないか、分かりませんが、数々の電磁波対策アクセサリーが販売されており、それなりに皆さん、アクセサリーの意義を感じているような感想を目にします。

私は、商用電源不要のパッシブプリアンプの、汚れのない、生き生きした、リアル感溢れるサウンドに感動しています。
(MASTERSパッシブプリアンプ、大好評です!)

一方、電源付アクティブプリアンプは、NFB設計、電源設計の工夫により、パワフルな音質を持たすことが可能です。
特に、特別提供品のプリアンプはパワフルサウンドです。
アクティブプリアンプについては、ご相談をお受けいたします。

オーディオはいろいろな楽しみ方があります。

お知らせ

2016年に販売終了致しましたチャンネルデバイダ“MASTERS CD-300FC”の製作復活です。
4連ボリュームが入手できましたので、ご注文を受け付けます。価格は変わりません。
よろしくお願い致します。


皆さん!どの程度の音量で聴いていますか?

皆さん!どの程度の音量で聴いていますか?

手元に、ピークメーター付きプリアンプ(特別ご提供品 ピークメーター付プリアンプ“MASTERS CA-777M/CUSTOM)があるので、試みに、検証、検討してみました。

まず、皆さんが自分の部屋で聴く音量の最大を90dBとしましょう。この音量は持っている音量計でチェックすると、かなりうるさいです。防音設備がなければ、少し近所迷惑な音量です。その時、スピーカーからはどの程度の音圧を出しているのでしょうか?

次にスピーカーからヒアリング位置までの距離を2mとしましょう。その位置で90dBの音量ですから、そうすると1mの時よりも離れていて下がるので、そのために、スピーカーは90+6dB=96dBの音量を出していることになります。スピーカーの効率を90dB(1m/Ω)とすると、スピーカーには6dB分パワーが入っていなければなりません。6dBの音量アップはアンプパワーで4倍の4Wになります。(但し、ステレオですから、2本のスピーカーでパワーを分担すると考えると、片側アンプのパワーは2Wになります。)

この音量ではとてもうるさく、平均ヒアリング音量はこれから、20dB程度下がって聴いていることが実際のピークレベル計で分かりました。20dBというとパワーに換算すると1/100になります。すなわち0.02W(20mW)となります。この数字を小さいと思うことは間違いです。8Ωでの電圧は0.4Vです。

従って、アンプパワーは2Wもあれば充分実用になります。事実、真空管アンプにおいて2W程度で充分楽しまれている方が多いです。ある程度のパワーマージンを持ちたいとすれば、3dBアップで、4W、6dBアップで8Wあれば充分です。

アキュフェーズのAクラスアンプで、20Wでも、音量が足りないというオーディオ誌でのテストリポートを見たことがありません。評論家さん達はしっかりしたリスニングルームで、それなりの音量で聴いています。それでも、20Wで充分なのです。

販売しているアンプは10Wというとスモールパワーと思われがちですが、これはある程度大きなパワーを表示すれば売れるという、オーディオビジネスがちらつきます。私が山水の在籍時、このような考えはありましたが、売るためにはハイパワーは大きな要素になりました。それから、今の立場になって考えると、上記のように大きなパワーはあまり必要としないのです。

それにしても、ピークメーターの動きはオーディオの“眺める楽しみ”を教えてくれます。ピークメーター付きプリアンプの美しさに見とれています。


特別ご提供品プリアンプ“MASTERS CA-888BL/PHcustom”

特別ご提供品プリアンプ“MASTERS CA-888BL/PHcustom”をエージングを兼ねていろいろ聴いてみました。

特別ご提供品のMASTERS CA-888BL/PHcustomは1台限りで作ったので、やってみたいことを搭載した意欲的なプリアンプです。

そのユニークなワイドユース

  1. API2520フォノイコライザー回路を搭載しました。APIでは2520の出力を自社製(API)のライントランスでバランス出力することを想定しています。このトランスは山水在籍時、アメリカ出張の際、現地で購入したもので、それから長期間、私の机に中で眠ったままになっていました。ずっと、いつか使ってみようと思っていたバランスライントランスです。このトランスはけっこう大きく、APIコンソールにフォノイコライザーとライントランス含めた基板ユニットになっていました。今回は、付属回路を削除して、フォノイコライザーとライントランスでフォノスター時をまとめました。ですから、フォノバランス出力だけを使うことが出来るようにフォノEQ出力スイッチを設け、ON/OFFできるようにしました。このバランス出力をバランス増幅プリアンプないし、ボリウム付きバランス増幅パワーアンプに接続すれば、バランス増幅アンプでプロ用仕様でAPIユニットのパフォーマンスを楽しめます。
  2. MCカートリッジ対応はタムラ製MCトランスを内蔵しています。昇圧比は20倍とオルトフォンタイプには少し昇圧比が足りないですが、APIフォノステージのゲインが充分あるので、使えます。また、デノンdl103タイプ、オーディオテクニカの12Ωインピーダンスカートリッジも充分使えます。。
  3. もっとも、1項のようなことをしなくとも、このプリアンプはバランス増幅ラインアンプを内蔵しているので、スムーズな信号の流れで、バランス伝送・バランス増幅サウンドが楽しめます。

ヒアリング感はどうか?

  1. CDが登場して35年、そのサウンドの限界は皆さん、感じていると思います。けれども、CDの良さは取扱が簡単、長時間楽しむことができる特長があります。SACDになればそれなりにサウンドは改善されますが、やはり、何か違和感あるサウンドなのはアナログレコード、テープを聴いてしまうと、わかってしまいます。今更、アナログレコードに戻ることはできませんが、手持ちのレコード在庫で充分楽しむこと、レコードの表、裏をひっくり返す面倒を我慢すれば、そのスムーズなサウンドが、やはりこれが本当のサウンドではないかと感じてしまいます。
  2. 幸い、私のようなレジェンドオーディオ人間は、ある程度の数のカートリッジをいろいろ持っているので、交換して楽しむこともできます。

ヒアリング時の接続はフォノイコライザーのバランス出力をZBバランス増幅パワーアンプに接続しています。

MMカートリッジで聴く(カートリッジ:ピッァリングMP/AC)

このカートリッジは当時、安価(当時¥6,300)で、出力が高く(6mV)、針圧が4g-6gと高く、どちらかと言えばDJ用とされたものですが、あえて、入手してみてその素直なサウンドに気に入っています。どのレコードを掛けても、そのサウンドバランスは中庸で聴き疲れすることがありません。このプリアンプで聴くと、さらに、さわやかで、分解能良好のサウンドが聴けます。シンフォニーのような大規模な音源では、更に気持ち良いサウンドが聴けます。混濁感など、皆無です。当方で販売していた“フィメールボーカル”の本来のアナログレコードでは、さらに密度濃いサウンドが聴けてしまいます。

MCカートリッジで聴く(カートリッジ:オルトフォンMC ROMAN)

このオルトフォンカートリッジはSPUよりもさわやかで切れ味が良いカートリッジです。すぐ、フィメールボーカルアナログレコードで聴いてみました。
まずはガッツな行方サウンドが奥村チヨ、渚ゆう子が聴き取れます。この感じはボーカルがそう聴こえるのではなく、カラオケ(バックオケ)のサウンド処理が素晴らしく躍動感にかられます。このあたりはCD版“フィメールボーカル”はアナログレコードにかなわない感じです。
我田引水かもしれませんが、APIのスタジオサウンドの味わいがこのレコードに合致したのかも知れません。このプリアンプではMCカートリッジで聴く限りクラシックよりもポップス、ジャズのほうがぴったりすると感じております。

そう言いつつ、クラシックのシンフォニーではワルター指揮のコロムビア交響楽団(レコーディング用に編成したオケでストリングスが2プルト:4人編成で非常に少ない)でベートーベンの“田園”を聴くことにします。この録音はともすればハイ上がりバランスになりがちです。けれども、出てきたサウンドは編成が少ないだけに各部の動きがこの接続では聴き取れ、美しいカルフォニアサウンド(カラッとした切れ味の良い)を味わいました。このパフォーマンスはこのプリアンプのおかげが大分あるように感じました。久しぶりにこのようなサウンドを楽しみました。


2016年のイシノラボはどうだったか?

明けましておめでとうございます。
年々、時の移ろいが早くなるのは加齢によるものでしょうか?
けれども、私は自分なりにもがいて、日々を過ごしていますが、これがストレスにはならず、生きがいになっているのかも知れません。

皆さんから見たら、我田引水、自己陶酔、手前みそと思えるでしょう!
マスターズブランドアンプとしてささやかな進歩と言うか、進展と言おうか、おずおずと書き出してみました。

2017年はどうなるか?それはこれから、準備を始めております。
そして、皆さん、まずは心身の健康を維持しつつ、日々を生きましょう。

Zバランスパワーアンプの進化

バランス増幅を達成し、次は、パワーステージはL/Rバランス電源構成、電圧増幅(プリドライブ・ステージと言う)は別電源、トータル3電源構成で、より、Zバランス回路は進化し、より、表現力豊かでパワフルサウンドとなってきました。

これまで、RCA入力については、いったん、RCA~バランス変換回路と通して、Zバランス回路入力に導いておりました。
いろいろ検討した結果、RCA入力においても、ダイレクトにZバランス回路に入力し、バランス信号入力時とまったく同様なバランス増幅をおこなうことができるようになりました。
プリアンプ、CDプレーヤーの出力がRCA出力で、バランス入力時と同じZバランス増幅のパフォーマンスが得られます。
アドバンストZバランス回路として、紹介しております。

Zバランスプリアンプの完成

フルバランスプリアンプ“MASTERS CA-888PZBシリーズ”として製品化

Zバランス・プリアンプができないものかと、ずっと考えておりました。かつて山水に在籍して、C-2301開発時、ラインアンプの方式について悩みました。
結局、ラインアンプは非反転アンプをHOT側、その出力を反転アンプに導き、COLD側として、商品化致しました。
それから、プリアンプのバランス増幅が気になりながら、山水からリタイヤ―し、それから、長い年月が流れました。
マスターズブランドのプリアンプとして、究極のローノイズ、低ひずみ、そして、優れたサウンドであるトランス式パッシブプリアンプに活路を見出し、多くの皆様に支持を頂いております。
その一方で、アクティブ素子プリアンプとして、Zバランス回路を搭載したアンプの検討を続けて参りました。
ようやく、Zバランス増幅プリアンプとして製品化でき、大好評をいただいております。そして、トランス式パッシブプリアンプにノイズ、低ひずみについてはかないませんが、Zバランスプリアンプの、アドバンストZバランスパワーアンプと組み合わせたときのサウンドパフォーマンスの気持ちよさは、驚きます。どうして、そうなるのかは分かりません。

私は以下のように考えています。
すなわち、私は、2016年、オーディオ誌にオーディオを味覚に例えて、“電気的特性は栄養価の表示のようなもので、そこからは味の良さは分からない。”と記述しました。確かに、現在のオーディオ技術では、電気的特性で音質の表現はほとんどできません。

さらに、ヘッドフォンのバランスドライブもそのままの回路構成でできます。
但し、Zバランスプリアンプの出力は純粋にバランス出力だけになるので、
Zバランスプリアンプ出力からアンバランス(RCA)出力を取り出すことはできません。
また、このプリアンプは、リーズナブル・プライスで製品化が可能となったと思っております。

ファインメットパッシブプリアンプ

ファインメットコア搭載トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777BC/FM”,バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBG/Pとして製品化

ファインメットコア材については、オーディオ誌“管球王国”で活躍しておられる“新さん”がその優秀性を広報して数年以上を経て、高級真空管アンプにトランスとして、良好な評判のようです。

マスターズとして、始まりは、2015年12月に、あるオーディオファンからのリクエストで何とか製品化ならないものかと言う問い合わせがありました。
私のほうはまったくファインメットコアを入手するあてがなく、このお話はそのままになってしまいました。
そのあと、いろいろと探したところ、タムラ製作所の事業所近くのコア加工会社と連絡が取れ、社長さんとお話したところ、タムラ製作所にコアを永年納入実績があったとのことでした。

コアサイズ等を検討し、ファインメットコアをカットコア形状に加工いただき、2016年1月にファインメットコアを2個、入手できました。さすがに、安くはありません。
当然、磁性材料としての電磁特性は最高と言えます。肝心のサウンド(音調)は明るく、パワフルでいて、細部の分離表現は見事です。大編成の音源で混濁するような気配は微塵も感じられません。
すでに、数名の方がお使いになっておられます。

パッシブプリアンプでヘッドフォンが聴ける!

すでにブログ「MASTERSのパッシブプリアンプでヘッドフォンが聴けます!」に記述したように、CA-999FBG/ACを購入なさった方からの報告に始まりました。まずは本当に聴けるのか?
本当に良いサウンドで聴けたのです!
次に、電気的特性で、使える特性が出ているのかを調べました。これもOKでした。
そこで、私のところにある視聴用パッシブプリアンプでいろいろテストし、2週間前には、ファインメットコアのトランス式パッシブプリアンプにゼンハイザー(150Ωインピーダンスのヘッドフォン)で聴いたところ、さらに、すっきりした、切れ味良いサウンドが楽しめました。
近々、ヘッドフォン端子付きファインメットコア搭載パッシブプリアンプを製品化しようと考えています。

多数個ケミコン効果

多くのアンプの電源部にはケミコンが使われています。ケミコンはその内部構造から、超高域まで、電源インピーダンスを低く保持するのは簡単ではありません。けれども、そこまで考慮しなくともアンプの動作は特に問題ありません。
けれども、そのケミコンにより、アンプのサウンドに影響を与えているのは事実です。

1979年代、オーディオ全盛時にはケミコンメーカーはケミコン、とりわけ、整流ケミコンのおおもとであるブロックケミコンのサウンド改善に熱心に取り組みました。
ニチコンは山水にオーバル(楕円)型ケミコンを提案してきました。その中身は、円柱状に巻いたケミコンユニットから太い電極端子(タブと言う)を数本引き出し、電気的に超高域まで等価電源インピーダンスが低くキープされるというものでした。AU-D907に採用され、好評を得ました。
また、ケミコンに詳しいオーディオ評論家、故 金子秀男さんは日立コンデンサ等のケミコンメーカーと共同で、高音質ケミコンの開発に取り組んでいました。その成果がAUREXをはじめとするオーディオブランドのアンプに一時、採用されました。
結果は悪くはなかったですが、コストがかさみ、1990年以降は尻つぼみになってしまいました。
ケミコンメーカーは、納入数が少ないオーディオ向けより、当時から発展してきたスイッチング電源用ハイリップルケミコンのニーズが爆発的に増えて、オーディオ用ケミコンの開発改良は、その時点で終焉を迎えたと言ってよいでしょう。
そして、驚異的なハイエッチング技術の開発により、ケミコンは飛躍的に小型・大容量化して、工業用電源への用途が大多数になりました。
この進歩は静電容量が取れるもののケミコンの抵抗成分は増えているのです。
それ以来、電源用ケミコンのオーディオ分野での進展はなくなったと言ってよいでしょう。

マスターズアンプでは、オーディオ全盛時のケミコンを在庫し、優先的に使ってきました。
そのようなとき、2016年7月、長時間聴いても疲れない、そしてサウンドが絶対混濁しない、ほぐれた感じのアンプを作って欲しいとのリクエストを受けました。
その注文した方の用途は、1日12時間以上使うジャズバーで、アナログレコードを主体にジャズをJBLスピーカーで流すとのことでした。
そこで、個別ケミコン(ぜいぜいφ35くらいまでの)を多数個、また、ブランド、容量を替えて、トータル24個でそのアンプの電源部を構成してみました。アンプの電源部はこれらのケミコンでいっぱいになりました。これらを並列接続して、電源部が完成しました。
もちろん、ケミコンだけでなく、超高域の低電源インピーダンスのキープにフィルムコンも並列に接続しました。
この状態で、長時間エージング後、聴いてみて、私はそのしなやかで、まったく混濁のないほぐれた音調には驚きました。
パワフルさを出すには大きなブロックケミコンは効果があるのはこれまでさんざん経験済みですが、この年になって、このようなシンプルなアプローチでの体験は新鮮でした。
また、安定化電源でこのアンプを動作させてみましたが、このような音調は再現できませんでした。
以後、マスターズアンプは、φ20~30程度のケミコンを置くスペースが少しでもあれば、多数個ケミコン電源構成を実践しております。

パーマロイOPTによるサウンド

限定数のパーマロイコアによる出力トランスは好評で、あと2台分を残すのみになりました。
何と言っても、断然のひずみの少なさは、電気特性がヒアリング結果と相関が高いということは明言できます。多くの真空管アンプに感じられるおおらかさよりも、楽器、ボーカル等のサウンドの細やかな表情が聴き取れます。
その意味から、朗々と耳から血が出るようなALTECサウンドにはあまり向かないと思います。
それよりも、B&W、KEFのようなヨーロッパのひずみの少ない、音響研究が進んだスピーカーに合いそうです。かつて、スピーカーは進歩が遅いと言われ続けてきましたが、近年のヨーロッパを中心として、スピーカーメーカーの研究、検討成果が製品に反映されていると思います。
特に、キャビネット形状、キャビネット内の定在波処理、キャビネットの振動防止処理などなど素晴らしいと思います。唯一の難点は価格が高いことです。¥100万以上出さないと、これらのスピーカーは買えない。
思わず、愚痴が出てしまいました。

パーマロイコアにより、出力トランスをうまく設計し、合致した真空管回路で真空管パワーアンプを作れば、これまでにない音調のアンプができます。
イシノラボでは、残り少ない限定出力トランスの後継トランスの開発に時間が少しかかるかもしれませんが、努力する方針です。

アクリルプレートケースの素晴らしさ

2016年はアンプ型番の変更、デザインの変更があり、少なからず、戸惑いを覚えた方もおられると思います。
大友デザイナーの優れた感性と工夫により、輝かしいフロントパネル、それに何度も研磨、塗装を施して作られたサイドウッドのケースが、マスターズアンプに採用されております。このケースを採用したアンプは、アンプ型番にG文字を入れております。
透明アクリルプレートでブラッシュアップされたフロント面がつややかで、美しく輝いております。
マスターズアンプのような小規模ブランドにおいては、このケース作りは大友デザイナーの手仕事により生み出されています。
オーディオは観て、触れる楽しみは、少なからず重要と思います。
まだ、まだ、名人、大友さんは健在です。
ちなみにメーター付きアンプをご覧ください。

MASTERS CA-707 custom
プリアンプ MASTERS CA-707 custom

MASTERS CA-707 custom
プリアンプ MASTERS CA-707 custom


フルバランス増幅真空管パワーアンプ“MASTERS BA-218FBG/P300B゛

BA-218FBG/P300Bを製作致しました。

BA-218シリーズのパーマロイコア出力トランスと300B

これまで、BA-218に300Bを搭載するカスタムアンプは何回か製作してとても良好なサウンドが得られています。

今回、パーマロイコア出力トランスと300Bを採用したのは初めてです。

パーマロイコアの特長

これまで、何回か述べましたが、パーマロイコアの特長は透磁率が高く、その結果、感度に優れ、ひずみが少ないことが挙げられます。但し、コアの価格が高く、また、オリエント材に比べ、最大磁束密度が低いので、パワーアンプに採用するとなると、巻線を多くする必要があります。

パーマロイコアは、聴覚的に考えると、微小レベル、ひずみ感の敏感な領域で、優れた性能を示すと思われます。ビジネス的には、どうしても価格がアップするので、真空管パワーアンプでは、オリエント材の出力トランスがほとんどとなっています。

一方、電圧増幅用のトランスでは、ひずみ性能において、パーマロイコアが採用されています。MCトランスでは、パーマロイコアの採用が大勢です。

BA-218FB/Pへのパーマロイコアトランスの限定採用

限定数のパーマロイコア出力トランスが入手可能となり、すでに、あと3台分のトランスが残るときに、Sさん(初めてのお客様)から、フルバランス増幅真空管パワーアンプ“MASTERS BA-218FB/P”に直熱3極管を採用したいとのリクエストがありました。さらに話が進んで、300Bにしようということになりました。そのうえで、パーマロイコアトランスを搭載することで、話がまとまりました。

具体的には、BA-218FB/Pに300Bを採用するとなると、EL34の3極管接続はバイアス電圧-38V程度で動作するのに対し、300Bは増幅率が低く、バイアス電圧は、プレート電圧400Vにおいて、-80V~-84Vと深くなるので、電圧増幅回路に工夫を凝らさねばなりません。具体的には、高い電圧での増幅において、クリップすることなく、ひずみレベルを良好にすることが必要になります。

そこで、初段管は増幅率が高い12AT7(ECC81)として、低ひずみ動作になるように、電源電圧、カソード抵抗、負荷抵抗を決定しました。

12AT7(ECC81)はRCA、GE、松下と、さらに、◇マーク付きのテレフンケンをテストしたところ、ひずみ、ノイズ特性で、◇マーク付きのテレフンケンがベストの結果を得ました。やはり、定評ある真空管の性能を確認出来ました。

そのうえで、充分なスタガー比を取ったうえで、クロスフィードバックを3dBと軽く掛けました。
300Bは直熱3極管ですから、ヒーターはハム防止から、DC点灯は必須です。そのうえで、ヒーター電圧は4.6Vとわずかに低めとしてあります。このようにすると、300Bのライフは大幅(50%程度)伸びると言われています。

このような検討と製作を経て、アンプが動作し始め、いよいよ最終調整に入ります。フィードバック量の少ない真空管アンプは、アンプのオープンループゲインに、仕上がりゲインは座右されます。従って、L/Rチャンネルのゲインを揃えることは、バイアス条件との兼ね合いがあり、調整ノウハウが必要です。

最終的にL/Rゲインは±0.1dB以内に入り、残留ハムノイズは0.3mVレベルに収まり、かつ、ひずみ特性はヒアリングレベル(1W)で0.06%以下と極めて優秀な特性が得られ、かつ、最大出力は20W+20Wをクリアすることが出来ました。
こうして一応の完成をみて、次は長時間テストを実施し、8時間程度を3回繰り返しました。この期間、同時にヒアリング致しました。

出力トランスコア、コンデンサ、真空管はエージングを施すことによって、サウンドが安定し、サウンド品位も向上します。

聴いてみる

まずは、クラシックからです。今回の音源はDECCAの名プロデューサー、ジョン・カルショウの名作品を集めたCDとしました。

当時のウィーンフィル、そして、レコーディングロケーションとしてベストなゾフィエンザールの音源です。

特に、混変調ひずみが音響的にも発生しやすい、オペラのコーラス、オケ、独唱者たちが一斉に音、声を出す部分の分離度と奥行き感に留意して聴き始めました。

まずは透明でしみわたるサウンドはこれまでの真空管アンプにないサウンドです。
そして、グランカッサの一撃にも全体の音場は全く乱れず、圧倒的でした。

次に、ソプラノによるオペラアリアを聴きました。特に、往年の名ソプラノの響きの清純さに聞き入りました。

さらに、オーディオアクセサリー誌の付録の女性3重奏(ソプラノ、メゾソプラノ、アルト)による教会デモボーカルを聴きました。レコーディングがシンプルなせいか、アンプによるものか、教会内で、天上からの響きと思えるくらいの女性ハーモニーに浸れます。

特に、モーツァルトレクイエム“ラクリモサ”では、思わず涙ぐむほどの感動を覚えました。

次は、ジャズ音源を聴くことにします。いつも聴くチャンスが多いのは、ビル・エバンストリオの“ビレッジ・ヴァンガード”でのライブCDです。お客さんからの、お皿をぶつける音が何とリアルなことか。また、各楽器の分離感は素晴らしい。このアンプの音調は、どちらかと言うと寒色系のすっきり感を覚えます。

よく、真空管アンプはゆったりしたサウンドと言われますが、この300Bアンプはそうではありません。和食の料理人が包丁で切った“お造り料理”のような切れ味を感じます。
ともかく、これまでの多極管アンプのサウンドとかなり違います。むしろ、よく作られた半導体アンプに磨きをかけたようなサウンドと私は感じました。

オーディオにかかわって、半世紀になりますが、まだ、まだ、経験不足を感じるし、興味深い現象に出会います。

そして、このアンプはSTAXイヤーSPをドライブするようにすることも可能です。おそらく、素敵なSTAXサウンドが出てくるでしょう。

素敵なフォルム

撮影した画像に示すように、アクリルプレートのフロンパネルに、アンプ上面には300Bが輝きます。割と、コンパクトなサイズにも収めることが出来ました。

興味のある方は、どうぞ、ご一報ください。

MASTERS BA-218FBG/P300B
フルバランス増幅真空管パワーアンプ MASTERS BA-218FBG/P300B

MASTERS BA-218FBG/P300B
フルバランス増幅真空管パワーアンプ MASTERS BA-218FBG/P300B


STAXイヤースピーカ/ヘッドフォン バランスドライブアンプ“MASTERS SX-3000BD”を改めて聴いて測定してみて

お話の始まり

先日、Hさんから、STAXイヤースピーカ/ヘッドフォン バランスドライブアンプ“MASTERS SX-3000BD”のカスタム品(バランス入力1系統のみ)で真空管フォノイコライザーを聴きたいとの問い合わせがありました。

真空管フォノイコライザーはRCA出力で、バランス出力がありません。接続には、ホット側出力のみ対応する変換ケーブルではバランス増幅アンプがうまく動作しません。
バランス入力対応(入力ですぐにRCAに変換する回路構成)のアンプでは問題ありませんが、何とかしてほしいとのお話でした。

納入後の性能、パフォーマンスを診る。

数日してアンプ類は届きました。この“SX-3000customの”内容を説明しましょう。

  1. STAXイヤーSPが聴けるのは言うまでもありません。それに加えて、5W+5Wのパワーアンプとしても使えるようになっています。もちろん、スピーカーの出力はスイッチでON/OFFできるようにしてあります。従って、パワー管は6V6GTを3極管接続で採用しております。
  2. 通常のヘッドフォンは使えます。また、バランス増幅の特徴を生かして、4線式のヘッドフォンなら、バランスドライブできるようにXLR端子が装備されています。
  3. このカスタムアンプは、入力はバランス専用とのリクエストに応えて、入力はXLR端子1組だけです。音量調整は4連ボリュームでおこない、さらに、L/Rレベルの微調整にL/R専用ボリュームが付いています。

測定してみる

そうして、まずはアンプを測定してみました。このアンプは約1.5年前に製作したセットです。納入後の経年変化も含めて、チェックは興味あり、重要な事項と思いました。

  • 残留ノイズを測定してみました。残留ノイズの測定にはどのような帯域で測定するかで大きく測定値が変わってきます。そもそも、JISやIHFの残留ノイズ測定法はメーカー側に有利に決めてあり、測定用フィルター低域はカット、高域も15kHzくらいでカット、従って、このデータが良いと言っても、“ブーン”というハムノイズがあってもそれは測定データに出てこないのです。
    マスターズではそれはおかしいと低域はカットせず、高域は30kHzまでの範囲で測定しています。ですから、ハムノイズがあればすぐ対処・改善するようにしております。
    スピーカー出力で測定してみると、L/Rとも250μV以下で、真空管アンプとしては非常に優秀、通常の半導体アンプと同程度の少なさです。そのうえ、ノイズ成分にハムノイズ成分はオシロで監視し、ほとんど検出できませんでした。
  • 次はひずみ(高調波特性)を測定してみると、極めて優秀です。特に、小レベル(0.5W)時のひずみは真空管アンプであるのに、0.05%以下と良好で、奇数次ひずみも少なかったです。さらに、パワーを出していくと、NFBの少ない真空管アンプにふさわしいソフトクリップ傾向です。また、1k/10kHzのひずみレベルも同等です。このアンプは、NFBは3dBしか掛けていないので、真空管アンプ回路の良否を見せてしまいます。また、NFBが少ないだけに極めて発振安定度(発振するわけがないほど、NFBが少ない)は抜群に優秀でした。
  • 周波数特性も極めてワイドレンジ、10~30kHzにおいて、-0.3dB以内に収まっています。特に、低域は超低域の周波数特性が落ちていると、プログラソースのサウンドずっしりさが発揮できないことをよく経験します。
  • STAXイヤーSPへのドライブ電圧のリニアリティは、500Vrmsを軽々と超えます。測定用のアナライザーを高電圧で壊す恐れがあるので、極めて短時間測定しました。

聴いてみる

少し、安心したところで、聴いてみることにしました。私に言わせれば、電気的測定は料理に例えれば、栄養データ(カロリー、糖分、タンパク質等)みたいなもので、電気的測定データが優れていても、聴いて(食べて)おいしいとは限りません
まず、STAXのイヤースピーカーからヒアリングすることにしました。

  • クラシック、シンフォニーを聴いてみる。すぐ感じるのは、圧倒的な音圧感です。けっこう、豪快なサウンドです。
  • ジャズのビル・エバンスの傑作、ビレッジ・バンガードのライブを聴きました。まず、お客様のノイズが生々しい。それにシンバルの一撃が浸透的です。ウッドベースの動きも敏感に感じます。
  • 次に、ヘッドフォン、それも最近買った、ゼンハイザーで聴きます。上記、音源で感じるのは、凄い低域のサウンドです。ゴリゴリとした低音は圧倒的です。さらに、バランスドライブ接続すると、それにすっきり感が加わります。
  • 番外編かもしれませんが、スピーカーで聴いてみます。これがまた、すっきり、スムーズ、そして、けっこう迫力あるサウンドです。半導体アンプのようなハードさのない、きびきびしたサウンドでした。
    このアンプのパフォーマンスはバランス増幅、バランスドライブの良さとアンプ自体の性能の良さがあるのだと思います。とりわけ、わずか、3dBのNFBが功を奏しているかもしれません。特に、6V6を3極管接続することは、非常に優れたリニアリティが得られました。

RCA→バランス変換アンプを作る

そして、Hさんのリクエストである、真空管フォノイコライザーがこの“SX-3000custom”で聴けるように、バランス変換アンプを製作しました。回路はホット、コールドともに独立してバランス変換して、低ひずみ、ローノイズの変換アンプが出来あがりました。RCA入力は2回路設けて、使いやすいようにしました。
真空管フォノイコライザーはCR回路で、かつ、MCトランスを内蔵してあります。
まず、電気的動作として、“SX-3000custom”の動作は非常に良好でした。

次に、アナログレコードを掛けて、STAXイヤースピーカーで試聴することにします。

はじめは超Hi-Fi録音として有名なTELACレコードです。パイプオルガンが加わるサンサースのSYM NO,3です。極めて、ノイズ少なく、ひずみ感が皆無で、見通しの良いサウンドです。オーケストラの遠近感もよく聴き取れます、そして、いよいよ、パイプオルガンの低音が静かに確実に、迫ってくる感じが聴き取れます、そしてフィナーレでは超低音も含めてfffで終わります。恐怖感を覚えました。同じ、箇所をゼンハイザーのヘッドフォンでは、さらに低域のドライブ感がものすごく、ダイナミックヘッドフォンのパワフル感もいいもんだ!という境地に浸りました。
次は、ダイアン・シュアーのフィメール・ジャズボーカルです。豊かな声量、行き届いたニュアンス、それにスイングするバックオケ、ジャズボーカルがどのヒアリングでも楽しめますが、ナチュラルな雰囲気を楽しむならSTAXイヤーSP、切れ味の凄さを感じたいなら、ゼンハイザーのヘッドフォンでした。もちろん、通常のスピーカーではのびのびしたボーカルを味わえます。

hanasi


絹巻線が見つかりました!

たまたま、パッシブプリアンプ用トランス巻線に適合する太さの絹巻線が1種類のみ、数台分、見つかりました。

絹巻線の用途は、巻線の絶縁材料になる絹の静電容量が少なく、高周波機器のコイルに使われます。
オーディオ用には、特に、実績はありませんし、やってみたとの報告も聞きません。
とりあえず、試作して、ヒアリングしたところ、より静寂なサウンドを感じました。

そこで、興味のある方!
パッシブプリアンプのトランス巻線に絹巻線を使用した仕様品のパッシブプリアンプの注文を数量限定で受け付けます。
なお、電気的性能はオーディオ帯域(10~100kHz)では、巻線種類で差異はありません。

価格は、絹巻き線のタップ配線処理作業に時間と手数がかかりますが、それほどの上昇はありません。
ご興味のある方は、お問い合わせ下さい。

【対象機種】
・CA-777G/AS
・CA-777G/AC
・CA-999FBG/O
・CA-999FBG/P(近日発売予定)

なお、CA-999FBG/ACは、対応する絹巻線の在庫がないので、対応が困難です。

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