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カレント・フィードバック(電流帰還)回路

ここ10年くらい前から、アナログアンプ回路について、カレント・フィードバックという回路方式が紹介されるようになってきました。
浅学ながら、自分なりに調べてみると、カレント・フィードバックは、過去のトランジスタアンプ、また、真空管アンプのNFBの掛け方と共通性があることが分かってきました。

過去の半導体アンプと真空管アンプのNFB

【図1】に示すように、初段に差動アンプを採用していないアンプ(1970年代前半)においては、アンプ出力ステージより、初段のエミッタ、ないし、ソースにNFB抵抗を介したNFBが成立していました。具体的には、初段の電流帰還抵抗にNFB抵抗が接続されるかたちです。
同じように、真空管アンプでは、アンプの出力トランス2次側から、NFB抵抗を介して、初段のカソードにNFBが掛けられています。(【図2】参照)

カレント・フィードバックの考え方

カレント・フィードバックに基本的な概念は【図3】に示すように、初段にバッファーが設置され、充分インピーダンスを低くして、その回路の電流感知回路部にアンプ出力部からNFB抵抗を介してNFBが掛けられます。抵抗値は比較的に低く(1kΩ程度)しておけば、NFBは電流感知して、その変動分はI/V変換回路を経て電圧になり、出力バッファーで構成されます。これがカレント・フォードバックアンプといわれる基本的な考え方です。

カレント・フィードバック回路は、これまで、初段に必ず設置された差動回路(【図4】参照)を採用していないです。“JBL SA-600”から始まったとされる差動構成回路は現在でもほとんどのアナログ半導体アンプに採用されています。ある意味、先祖帰りともいえる方式です。

そもそも、カレント・フィードバックはスルーレートを高くしたい(ワイドバンドアンプ:高周波領域まで増幅できる)OPアンプICメーカーがこの回路に行き着いたとされ、市販されているハイスルーレート・ICアンプのスル―レートは1000V/μVを超えています。繰り返しますが、スルーレートが高いことは高周波増幅能力が高いことを意味します。100MHz近辺のビデオ回路に使われています。
差動回路に代表されるボルテージ・フィードバック回路(【図5】参照)は超高域、高周波帯域ではオープンループ特性が落ちて、NFBを掛けることにより、アンプの位相偏移が大きくなり、うまく位相補償回路を駆使しても位相偏移は135度くらいになってしまいます。180度になると発振します。オーディオアンプの常識としては、連続波での応答では発振しないので、問題ないとされています。

ところが一部の音質に敏感な方々から、どうも、ボルテージ・フィードバックアンプを聴くと、どこか違和感、混濁感があると指摘されることもあります。そのことをオーディオを電気的に検証しようとしても検証できず、今なお、このようなアンプ談義に終わりがありません。なぜなら、音楽のような過渡信号に対する解析は進んでいないからです。おそらく、過渡信号に対して位相偏移が大きいとNFBが理論どおり掛からず、結果的に満足するサウンドと感じられないのでしょう。
発振回路的なアプローチでは、負性抵抗の発生により、サウンド的に劣化する可能性があるという見方もあります。

上記のような現象により、いまだに、フィードバック量の少ない無帰還の真空管アンプに根強い人気がありますし、エレキギターアンプにトランジスタアンプが採用されない根拠にもなっているのではないでしょうか。
そうこうしているうちに、1990年代、差動回路によるボルテージ・フィードバックに限界を感じた一部のエンジニアは、2000年あたり、カレント・フィードバック回路をオーディオアンプに採り入れ始めました。
理論的には、アンプ位相偏移は極限に抑えられることで、NFBが音楽のような動的成分であってもNFB演算が正確におこなわれるとされています。負性抵抗成分も発生しないとされています。
【図6】にシンプルなカレント・フィードバック回路例を示します。このカレント・フィードバックアンプ回路初段はバッファーで構成されるので、初段は出力からフィードバックを掛けられないことになります。また、アンプ全体にフィードバックが掛けられないので、DC安定度はボルテージ・フィードバックに比べて少し不利なようです。
具体的には、代表的なアンプブランドではあるA社では、全面的にカレント・フィードバック回路が採用されています。今から考えると、それ以前とその後ではA社のサウンド傾向は微妙に変化したという指摘される方もおられます。

最近では、カレント・フィードバック回路部をモジュール化して、オーディオアンプ回路に採用するオーディオブランドもあるようです。オーディオクラフト誌や、オーディオ誌において、モジュール搭載アンプのサウンドが高い評価を得ているとは言えず、さらに、上記に具体的にカレント・フィードバックについて言及されていることはあまりないようです。

関連事項

関連事項として、山水のダイアモンド差動回路(【図7】に示す)は2組の差動回路が上下に配置され、4か所のコレクタ加えられた信号電流成分は次段のI/V回路に接続され、バッファーとされるパワーステージ回路で構成されます。この回路は初段に通常の定電流回路を伴った電流制限回路があるもののダイアモンド差動回路に電源制限がなく、電源電圧までフルスイングすることが出来るので、スルーレートは驚異的な200V/μVです。そのダイアモンド差動回路から、バランス動作に展開したのがXバランス回路です。

一方、マスターズのZバランス回路も、初段差動回路に定電流回路を設けていませんので、電源電圧までフルスイング出来ます。電源電圧はそれほど高くしていないので、200V/μVには達していませんがハイスルーレートアンプです。ハイスルーレートアンプでは位相偏移が少なく、負性抵抗の発生が少ないと言えます。どちらかと言うと、山水電気のダイアモンド差動回路は今から考えると、結果的にカレント・フィードバックの長所を生かしているようにも思えます。具体的には差動回路を採用していても、定電流回路を設けないことがハイスルーレート性能を達成する要素のようです。

さて、スルーレートの値ですが、フィードバック量の少ないアンプでは1V~10Vもあれば充分でしょう。また、ゲインが取れないバッファー/フォロアー回路には、負性抵抗による発振が発生しないように、入力に打ち消し抵抗を付けておくことが肝要です。

【図1】差動入力回路を採用していなかった1970年代前半のアンプ(2ch分)

【図1】差動入力回路を採用していなかった1970年代前半のアンプ(2ch分)

【図2】真空管アンプにおけるフィードバック

【図2】真空管アンプにおけるフィードバック

【図3】カレント・フィードバック基本構成

【図3】カレント・フィードバック基本構成

【図4】差動入力回路を採用し、コンプリメンタリー構成のアンプ

【図4】差動入力回路を採用し、コンプリメンタリー構成のアンプ

【図5】ボルテージ・フィードバック基本構成

【図5】ボルテージ・フィードバック基本構成

【図6】カレント・フィードバック構成の例

【図6】カレント・フィードバック構成の例

【図7】ダイアモンド作動回路の基本構成

【図7】ダイアモンド作動回路の基本構成


プリアンプのあるべき姿とアクティブアンプ設計の難しさ

きっかけ

プリアンプはCDが登場して、CDプレーヤーの出力が2Vmaxと高いので、従来のプリアンプのように、17.6dBのゲインを持つ必要がなくなった。
むしろ、パワーアンプへ送り込むオーディオ信号の調節に主たる役割があると言えましょう。
それでも、アクティブアンプ方式のプリアンプは、ラインアンプゲインを12~18dB程度のゲインを持たせて、構成しているところが多いようです。
実際の使用に際しては、減衰器としての動作がほとんどです。むしろ、プリアンプゲインは0~6dBもあれば充分です。
それでも、上述のようにゲインを持たせてしまうのは、半導体アンプのオープンループは80~110dBも取れてしまうので、プリアンプとしてもゲインを得るためには、例えば、オープンループゲイン:80dB、プリアンプゲイン:18dBとすると、80-18=62dBもの多量NFBを掛けているのです。
NFBは、S/N比は改善出来ませんが(NFB量だけゲインが減るから、何処までいってもS/N比はアンプ基本回路で決まる)、残留ノイズとひずみと出力インピーダンスを下げることができます。
すべての現象は、必ず作用をさせれば、反作用があります。プリアンプでは、それは何でしょう。パワーアンプなら、スピーカーからの逆起電力などの反作用があります。プリアンプは負荷がパワーアンプの入力インピーダンス分だけですから、発振安定度にも問題ないように見えます。
連続波による電気的性能を見てみると、多量NFBにより、ひずみは極小に収まります。普通に作れば、プリアンプは簡単にできそうに見えます。
(バランス回路についてはこの際、考えないとします。)
それでは、皆さん、プリアンプについて、悩むことはなくどれを選んでも良いように思えます。一方、どのプリアンプも使う気にならないというオーディオファイルもおられます。その言い分は音質がいまいちと言うものです。

NFB量とNFBの正しい掛かり方

NFBアンプはNFBを掛けた分、ゲインが下がり、また、入力と出力との位相差は高域にいくほど大きくなります。
NFBは入力と出力との位相差がなければ、NFBの作用が理想的に作用し、副作用的な現象は起こりません。
具体的に、2段構成(ほとんどのアンプ)アンプですから、高域端では、その位相偏移は180度に達します。そのとき、そのアンプが、ゲインがあれば発振します。一応、アンプ設計の常識では、位相偏移が135度以内なら、問題ないと言われて、多くのNFBアンプはそうなっています。
果たして、位相差が大きな信号が入力の演算(サミングポイント)がうまく作用して、うまくいくのでしょうか?連続波でひずみを測定してもうまくいっているのです。
ところが音楽は複雑な不連続波ですから、NFBが正しく動作していると言うことは断言できません。特に、近年、高周波ノイズ(電磁波ノイズ)がまき散らされています。高周波ノイズが入力すれば、さらにさらに、NFBはおかしな作用しかしなくなるでしょう。
だから、アンプは聴いてみないと分からないと言われてしまうのです。
このあたりの問題を追究した方はごく少数の方だけです。
このように検討の行き場を失ったアンプ設計は、部品を選択したり、配線材を変えたり、振動防止をしてみたりして、結果として音調を変えたに過ぎない努力をしているという見方もあります。
むしろ、もう少し、NFBをオーディオ的に考えるべきと思います。
究極な方式は、NFBを掛けない無帰還アンプにすることです。オープンループ特性では、真空管は徐々にひずみが取り扱う電圧が大きくなるにつれて増加しますが、入力が小さいときは0.02%くらいの値を示します。
だから、大きな信号時にはひずみが0.5%と大きくなっても、愛好するオーディオファイルは少なくないのです。

NFBに関係なく、高音質プリアンプを実現

もっと、方向を変えて、アンプを用いないトランス式プリアンプはNFBまるでなく、磁気素材の性能と巻き線技術で出来ています。
その結果、我田引水になりますが、MASTERSのトランス式パッシブプリアンプは、連続波であろうとオーディオ信号であろうと、ひずみは発生しません。ですから、まったく次元の異なるサウンドなのです。幸い、高い評価をいただき、私はせっせと製作しております。

NFBアンプを高音質化する方向

さて、もう少し、NFBアンプを見捨てずに考えると、NFBにより位相偏移をより小さくすることを考えるべきと最近思い始めました。
具体的には、位相偏移が大きいと、アンプの入力インピーダンスは負性抵抗分が発生します。この防止対策には、入力に抵抗を付加して、負性抵抗を打ち消したり、位相偏移を小さくするために、位相補償を施して、対策する方法があります。振り返れば、かつて、山水のAU-607以来、2ポール位相補償回路によって、少なくともオーディオ帯域(~20kHz)まではオープンループをワイドして、NFBが位相偏移を起こさないよう考慮していたのです。それ以上の高域はフィードフォワード回路で、ひずみ低減を図っていたのでした。
このような方策によって、音質が確かに向上します。
けれども、近来のインバータ、スイッチイング電源、パソコン、携帯、スマホ等から発する電磁波ノイズがアンプに入り込み、NFBの弱点である位相偏移の大きい高周波領域(100k~10MHzあたり)で、NFBを混乱させます。このような現象によって引き起こすひずみ(NFBひずみと言うべきか)が発生して、その成分がフォールダウン現象によってオーディオ帯域に降りてきます。そこで、濁った、抜けの悪い、詰まった、というようなヒアリング現象を引き起こす可能性があります。一方、このようなサウンドがある種のプログラムソースではプラスに作用して、パワフルと言う方もおられます。
結論として、厳しく考えると、NFBアンプの位相偏移は90度以内に収めることが最低限度必要と考えます。

なお、近年、上記のような電圧帰還ではなく、電流帰還(カレントフィードバック)回路を採用しているアンプがありますが、これは後日、記述したいと思います。

お知らせ

マスターズのパッシブプリアンプ・ヒアリングをご希望の方は、いろいろなパワーアンプ、スピーカーと組み合わせることができる“サウンドハイツ”(千葉県市原市)にセットされておりますので、そこで、存分にお聴きください。


電源問題とプリアンプのお話

電源事情

ここ20年以上、スイッチング電源、インバータ電源の普及によって、家庭用電源の正弦波が崩れて、正弦波のあたまが潰れています。
専門的には、コンデンサの作用によって、コンデンサに充電する時間(流通角)が静電容量が大きくなるだけ小さく、充電電流が大きくなります。
こうなると、オーディオアンプの整流回路でのDC出力はきれいな正弦波の場合より、取り出せるDCパワーは5~8%程度低下すると言われています。
ですから、整流回路のコンデンサーの静電容量はむやみに大きくしては逆効果になります。

アンプは交流分(リップル)の少ない、低インピーダンスの電源で動作させるのが必要とされます。そのためには安定化電源なるものが普及していますが、この回路はNFBを応用しているので、その動作について、アンプの静特性では測定差がでてきませんが、ヒアリングでは差異があると感じる方は少なくありません。
それに加えて、近年の携帯、スマホ通信の通信電磁波は、アンプの電源部に混入します。混入した場合のアンプが受ける障害はヨーロッパの電波試験で明らかになったように、悪影響(アンプのS/Nや、ひずみ率が悪化する)を与えます。
(電波障害に対する対策は50年前から、ヨーロッパでは要求され、この試験をパスすることがヨーロッパで販売できるアンプにとって必須事項となっている。)

ところが50年前から、電磁波対策をすると、アンプのヒアリング結果(音質)が悪化するのは、関係者の間では常識になっています。
このような事態を知ってか、知らないか、分かりませんが、数々の電磁波対策アクセサリーが販売されており、それなりに皆さん、アクセサリーの意義を感じているような感想を目にします。

私は、商用電源不要のパッシブプリアンプの、汚れのない、生き生きした、リアル感溢れるサウンドに感動しています。
(MASTERSパッシブプリアンプ、大好評です!)

一方、電源付アクティブプリアンプは、NFB設計、電源設計の工夫により、パワフルな音質を持たすことが可能です。
特に、特別提供品のプリアンプはパワフルサウンドです。
アクティブプリアンプについては、ご相談をお受けいたします。

オーディオはいろいろな楽しみ方があります。

お知らせ

2016年に販売終了致しましたチャンネルデバイダ“MASTERS CD-300FC”の製作復活です。
4連ボリュームが入手できましたので、ご注文を受け付けます。価格は変わりません。
よろしくお願い致します。


オーディオ製品の価格

オーディオ製品の価格

7月号の“ステレオ”誌を眺めていたら、評論家・石田善之さんが“1桁高額化してしまったのはいかがなものか?”と言う感想を書かれていました。
私も同感です。振り返って、MASTERSブランドの価格は安いと思います。これまで、安すぎるというコメントがあっても、まけてくれというお話は皆無です。経営規模が零細ですし、利益をあげようとする気持ちもありません。
けれども、ある程度の規模の会社、また、今後成長しようとする経営者はそうはいかないと思います。

価格はどうやって決まるのか?

皆さん、TVやラジオショッピングで、通販でお買いになる機会は少なくないと思います。私もつい、食べ物などを注文してしまいます。
常識的にこのようなショッピング形態では、放送側は価格の50%程度を取ると言われています。
ですから、放送側のPRタレントは懸命に売り込むのです。また、“そうしていかないと採算が取れない”と放送局側は言います。

さて、オーディオ製品はどうなっているのかを私の推測で記述したいと思います。

輸入オーディオ製品

例えば、ヨーロッパブランドのスピーカーを輸入するとしましょう。
仮に、FOB(船積価格)が¥100万だと、輸入代理店は運賃、保険料、通関手数料、倉庫費用がかかります。これで¥120万になったとしましょう。
そして、カタログ、宣伝、販売店への輸送料等で、¥130万になったとしましょう。この費用から、定価は、60%~70%の名目利益を取って計算すると、¥325万~¥433万になってしまいます。
もちろん、輸入代理店は、販売店には65~70%掛け程度で納入すると、販売店側の粗利は¥98万~¥173万、その粗利幅は代理店側の経営判断によるでしょう。
一方、販売店は販売店間の競争があるので、定価からの割引販売が常態化しています。
一般的に販売店は定価の26%程度が継続経営の目安とされています。従って、割引率が2割とか2割5分とか言うと、経営的には苦しくなります。
実売¥260万~¥325万になります。
となると、よほどの富裕層でないと買えないでしょう。私の予測では、オーディオ富裕層は全国で500人くらいでしょう。
もう少し、関係者の皆さんは努力されないと、いわゆる“新品オーディオ”マーケットはじり貧になってしまいます。今や、オーディオショップは、全国100~120店舗程度と少なくなっています。

最近、輸入製品で、中国生産が主体となっている海外ブランドのスピーカー等は、元々の製造原価が極めて安く、さらに数量が多くなると、量産効果により、さらに安くなります。
そうなると代理店もある程度の数量が売れると想定して、思い切った定価をつけることができます。販売店に言わせれば、販売利益は薄いと言いますが、それほど値引きしなくとも販売できるとすれば、良い循環になるのではと思います。私も購入してみたいと思うほど、CPの高い海外スピーカーがあります。

国内オーディオ製品

国内販売を主力としている国内ブランドは、定価に対する粗利は30~40%と割と良心的と思います。今や、数少ない国内老舗ブランドアキュフェーズ(国内資本会社),デノン,LUX,オンキョーの価格はリーズナブルと感じます。
そのうえでの15%OFF程度の実売はそれなりに売れれば健全と思います。何とか、オーディオファイルの方も下取り等で、入手できそうです。

ところが、海外を含めたビジネスを展開しようとすると、海外代理店は日本の業者よりも利益を要求すると言われています。
また、輸出する際、輸出業務を委託する代理店を使うと、その代理店に納入した価格に上乗せして、輸出することになります。
しかも、情報が世界中に広まる時代ですから、海外業者は内外価格差を理由に輸出価格引き下げを要求してきます。
おそらく、アキュフェーズは世界最高の技術・作り・完成度でありながら、輸出実績は非常に少ないと思います。国内価格をリーズナブルに維持したいと思っているように推測します。

そうなると、仕方なく、国内定価をアップさせれば、海外業者はビジネスできるようになるわけです。“日本国内で買うのと同じような価格だ!”、“これなら、ビジネスできる。”
このような現象は一部カートリッジ、真空管アンプブランドに見受けます。
マイソニックの松平さんでさえ、“カートリッジの価格が高くなり過ぎた”と、最新号のオーディオ誌で述べています。
この傾向に組みしないのがデノンDL-103系カートリッジです。海外ではビジネスにならないと、海外業者からのお声はかからないと聞いています。また、老舗オルトフォンもSPUカートリッジほか、リーズナブルな日本国内定価です。よって、上記2機種は良く売れているそうです。
このあたりの事情を組んで、皆さん、オーディオ趣味を楽しんで下さい。

ちなみに、MASTERSアンプはリーズナブル価格で継続(大きく広げる気はありません)することだけを考えて、1台、1台、製作しています。
最後に、MASTERSアンプは他のアンプとは異なる特長を備えていますので、そのあたりにご注目下さい。まだまだ、ユニークで、優れたアンプを製品化する意欲でいっぱいです。

(注)驚くお話:1970年代、上述の松平さんが勤務していたカートリッジ会社から、山水はセパレートステレオ用カートリッジにMCカートリッジ(昇圧トランス付き)を2000台/月ペースで注文して、松平さん達は懸命に作ったそうです。そのときのMCカートリッジ単価は、¥3,000程度ではなかったかな?とおぼろげに思い込んでいます。(その頃の初任給は¥4万くらいだったでしょうか!?)

ある程度(300個程度)のロットで作れば、カートリッジ原価はぐんぐん下がるのです。


パーマロイコア採用の小型出力トランスの開発と搭載アンプの製品化計画

パーマロイ出力トランス搭載アンプのマイナーチェンジ

BA-218FBG/Pはパーマロイトランス搭載で大変好評、特に、そのサウンド評価が高いです。これまで、限定販売しておりましたが、予定数を販売し、いったん、このアンプの販売は終了と考えておりました。けれども、大好評、そして、このアンプの高音質は他に例のないサウンドです。そこで、急遽、新規トランスケースの入手とパーマロイコアの入手に努めた結果、引き続き、BA-218FBG/Pの販売は継続できることになりました。

小型パーマロイトランスの開発

現在、パーマロイコア採用の出力トランスはMASTERSのBA-218FBG/Pに搭載したほかはありません。かつて、2001年当時、タムラにおいてパ-マロイコア採用の出力トランス(F7021)が販売されていました。当時のオーディオ誌を読むと、“空恐ろしいほどのリアリティ!”、音楽の表情が繊細かつ大胆で!”、“大編成のオケが怒涛のごとく響く!”と評価されていました。残念ながら、高い評価に関わらず、あまり評判にならず、いつしか販売終了になってしまいました。
私は当時、山水OBの方が活躍されていた阪東電機に、シングル仕様でパーマロイコア採用の出力トランスを4個、作って貰いました。でき上がってきた特注トランスは、10W(40Hz)の容量なのに驚くほどの大型になっていました。また、高価で、これには参りました。ここで悟ったことは、高い磁束密度を取れないパーマロイコアは、DC磁化するシングル用出力トランスにはCP的にも向いていないことでした。具体的には、300B、2A3のシングルアンプを搭載して、2台切りで終わってしまいました。
それから、私はMASTERSのMOSFETバランスアンプのほうに傾注したので、真空管バランス増幅アンプとして、橋本電気に特注したバランスNFB巻線付き、オリエントコアの出力トランスBA-218FB/OSはパワフルで情報力が多く好評でこれまで、かなりの台数の製作実績で推移しています。

その後のパーマロイ出力トランス啓発の経緯は、これまでのブログや製品紹介文で記述しています。
パ-マロイコアは高価ですので、何とか小型化して、お買い求めいただきやすい金額でパーマロイトランスを出来ないものかと考えました。(実はこれまで、80Ω:8Ωのマッチングトランスとして、カスタムトランスとして、MOSFETバランス増幅アンプ搭載して、好結果を得ていました。)
パーマロイコアは高価なので、資金的事情で、ある程度の重量でしか入手できない経営状態です。そして、在庫負担にならないようにすることも注意点です。
そこで、採用するコアサイズは使用量がある程度見込めるコアを採用することにしました。それには、パッシブプリアンプに採用しているコアサイズとして、試作検討することにしました。

さて、少し分かりにくくなりますが、我慢して、このトランス基本数式を眺めてください。

N1=(4.44×E×10の8乗)÷(B×D×F)
N1:1次巻き数、E:取り扱う最大電圧、B:トランス励磁磁束密度、F:印加される最低周波数

この数式から読み取れることは、パーマロイ系コアはオリエントコアほど大きな磁束密度がとれないことです。オリエントコアの1/4程度です。従って、パーマロイ系コアを採用すると、パワーを取り出すことがオリエントコアに比べ不利になります。それでなくともパーマロイ系コアは高価ですから、真空管アンプの出力トランスには採用が難しくなったのでしょう。通信用トランスやMCトランスでは取り扱う電力が小さいですから、低ひずみのパーマロイ系コアが採用できたのです。(例外として、かつて、一部のウエスタンエレクトリックの業務用真空管パワーアンプには音質優先のため、パーマロイコアが出力トランスに採用されていました。)

さて、話を戻しますと、このコアで扱えるパワーは3W程度を目標としました。3Wというと小パワーと思われるでしょうが、88dB/W程度のスピーカーならば、ガンガン近所迷惑になる音量になります。

試行錯誤を重ねてたどり着いたのが、次のようなものです。

  1. 巻けるだけ1次巻線数を増やすことで、扱える最大電力を増やすとともにひずみ低減設計としました。(例としてLUXのOY型トランスはこの方向の設計で、30W容量にもかかわらず1次巻線はφ0.16で他メーカーよりたくさん捲き、最大磁束密度を下げました。ただ、30年後、1次巻線の断線が頻発したのは仕方ないことでした。OY型トランスの優秀な音質は現在でも高い評価です。)
  2. 2次巻線はバランス増幅に適合するとともに4パラレル方式としました。
  3. 結果的に1次インピーダンスは15kΩ程度となり、採用する3極管接続真空管のひずみが少なくなるようにしました。

そして、タムラOBのトランス達人Y・Yさんに作っていただき、このトランスを搭載したパワーアンプを写真に示します。

電気的特性とその音質

製作したアンプの真空管構成は6V6GTpp+5963+ECC81として、無帰還(NON NFB)とした。取り出せたパワーは3W+3Wで、音量は充分取れました。周波数特性は20-100kHz(-1.5dB以下)とワイドレンジです。ひずみ特性も100Hz、1kHz、10kHzともに良好で、かつ残留ノイズも無帰還にもかかわらず、0.5mV以下に収まりました。
次はヒアリングです。スピーカーは相変わらずTANNOYアーデン(アルニコ仕様)です。ヒアリングに使用した音源“ステレオ”誌の付録のCD(ジャズ、ギターソロ)のサウンドが素晴らしく、リアルなので最近よく使います。
オーディオ評論家として活躍の石田善之さんが録音を担当したもので、マイク選択のセンス、セット位置が素晴らしいせいか、他のメジャーCDの音源とは異なるリアルさです。おそらく、これらの楽器を至近距離で聴いたら、このようなサウンドになることは過去の体験で味わっています。
まず、スタートのブラスセクションの浸透的な響き、瑞々しいサウンドに引き込まれました。それに絡んでくるドラムス、ピアノとの混然一体となるサウンドのなかに各楽器の生っぽい響きは心身を揺さぶりました。おそらく、自己陶酔、達成感による要素もあると思いますが、明確に、これまでの真空管アンプサウンドと違うのは事実です。

これからの製品化について

3Wでも十分な音量が取れて、かつ、お買い求めいただき易い価格のバランス増幅真空管アンプを、近々発表することを予定しています。

パーマロイコア採用の小型出力トランス

パーマロイコア採用の小型出力トランス

パーマロイコア採用の小型出力トランス


コンサートサウンドとオーディオサウンド

ここ2年、“ミューザ川崎シンフォニーホール”が、主にコンサートに通うホールになっています。
その間、東京芸術劇場(池袋),墨田シンフォニーホール,オペラシティコンサートホールには出かけていました。サントリーホールはここ3年くらい行っていないです。
ミューザ川崎は、東日本大震災でホール天井が落下したことで有名になりました。このホールはベルリンフィル,ウィーンフィル等のメジャーオーケストラがサントリーホールと並んでコンサート会場とすることで分かるように、高く評価されているようです。
このホールに私は前列2列,8列,2階5列,3階右側,それに2階アリーナ席といろいろ聴いてみました。また、リハーサルも聴きに行き、200名程度の観客での響きの豊かさも体験しました。

私の感じたホールの特長

  • 演奏スペースの高さが低く、観衆からの目線を上げずに、一体感があるのが好ましいです。
  • ホール全体の響きが明るく、軽やかで、重苦しさがありません。レコードで聴くベルリンフィルハーモニーホールのような響き具合を感じます。
  • ここ2回、2階アリーナ席で聴くと、オーケストラとの一体感が得られ、指揮者の指揮振りと団員の反応がつぶさに見られるのは収穫です。

コンサートサウンドとオーディオサウンドとの違い

  • 当然ですが、Dレンジの差はどうしようもありません。アリーナ席、1階、前列では、オーディオメーターで測定したわけではありませんが、ピークで110dBは超えているでしょう。無音時での騒音レベルは50dB程度かとも思います(隣席の方の息遣いが聴こえる)。Dレンジは60dB以上ありそうです。この大音響を体に浴びる爽快感はコンサートの良さです。ちなみにスピーカー測定に使用される無響室の無音レベルは25dBくらいです。
  • 一方、私は必ず10分程度、目を閉じて(視覚をなくして)、聴いてみることにしています。やはり、人間の情報収集力は視覚情報が80%以上です。
    かつて、オーケストラの楽器配置が左~センター~右の音場展開は高域~中域~低音域になるように第一バイオリン,第二バイオリン,ビオラ,チェロ,その後ろにコンバスとステレオ音場を認識しやすかったのです。周波数バランスも気持ちよく聴けたのですが、近年、右側にビオラが来て、チェロが中央よりに入って、音域バランスが我々オーディオファンから乱れたバランスに聴こえるのは残念です。
    その状態で目を閉じて聴いてみると、確かにFF時のサウンドレベルの大きさには、とてもオーディオ機器とリスニング環境では再現できませんが、通常演奏レベルの音質・音調はコンサートと私のリスニングルームでも差異はそれほどないように感じています。むしろ、オケから離れた席で聴くより、細部の楽器展開はオーディオリスニングのほうが良好に聴こえます。
    従って、コンサートに行く意味は20%の聴覚情報より、80%の視覚情報を味わうように感じます。ここ2回ほど、2階アリーナ席で聴くと10mくらいの距離で指揮者の指揮ぶりがオケサイドからすべて見られます。どのタイミングでオケが指揮者についていくか?オケとオケ団員との相互のやる気が何となくわるような気ががします。

コンサートに行く意味

クラシックコンサートでは、視覚/聴覚とによって、会場で感動を共感でき、充足感を得ることができることは大きな意味があります。スピーカーを使ったライブコンサートではそのサウンドはCDで聴いた方がはるかに良好なサウンドで聴けます。けれども、やはり、主に視覚情報により、みんなで感激に浸れる一体感は素晴らしいものです。

オーディオ評論家では故、金子秀男さん、山中敬三さんはクラシックコンサートに出かけていました。山中さんはサントリーホールで倒れ、帰らぬ人になりました。菅野沖彦さんはクラシック録音(特に朝日ソノラマ時代)を手掛けていました。
ほかの評論家の皆さんはオーディオサウンドを重要視していたように感じます。
私は共感・感動も大切と思っているので、仕事に差し支えない程度のペース(6回程度/年)で、出かけることにしています。
次は6月11日にミューザ川崎に、また聴きに行きます。何と、アリーナ席は¥2,500という安さです。


絹巻線が見つかりました!

たまたま、パッシブプリアンプ用トランス巻線に適合する太さの絹巻線が1種類のみ、数台分、見つかりました。

絹巻線の用途は、巻線の絶縁材料になる絹の静電容量が少なく、高周波機器のコイルに使われます。
オーディオ用には、特に、実績はありませんし、やってみたとの報告も聞きません。
とりあえず、試作して、ヒアリングしたところ、より静寂なサウンドを感じました。

そこで、興味のある方!
パッシブプリアンプのトランス巻線に絹巻線を使用した仕様品のパッシブプリアンプの注文を数量限定で受け付けます。
なお、電気的性能はオーディオ帯域(10~100kHz)では、巻線種類で差異はありません。

価格は、絹巻き線のタップ配線処理作業に時間と手数がかかりますが、それほどの上昇はありません。
ご興味のある方は、お問い合わせ下さい。

【対象機種】
・CA-777G/AS
・CA-777G/AC
・CA-999FBG/O
・CA-999FBG/P(近日発売予定)

なお、CA-999FBG/ACは、対応する絹巻線の在庫がないので、対応が困難です。


1978年製“サンスイ AU-707”の修理

始まり

2週間前に、TELが鳴った。“千葉市に住んでいるものですが、AU-707を修理したい!“という内容でした。
以前、AU-D707を修理して、うまくそのサウンドは生き返りました。
それから、ずっと、動作しているようです。
今回は、同じデザインですが、1978年に製造年が遡ります。うまく、直るかどうか?特に、修理部品の入手に心配がありました。
お客様には、大分、年月が経っているので、保存状態が悪いと治らない場合もありますと、説明すると、部屋の中に置いていたので、保存状態は悪くないということでした。

持ち込み

2日後、修理依頼された方が車で、AU-707を運んできた。“若いころ(20才代)、やっと貯めて買ったオーディオは、アカイのデッキとAU-707でした!”と言うお話で、廃棄するには忍びなく、最近、世間がアナログレコードを取り上げる様になってきて、急に、アナログレコードを聴きたくなったそうです。“症状は?”と聞くと、“電源が入らない!”ということでした。
持ち込まれたAU-707は予想よりきれいな状態で、ボンネットを開けると、ほこりが少ない良好な状態でした。

修理

1次電源関係の故障

1次側の100V電源回路をチェックすると、導通がありません。電源ヒューズをとチェックすると、導通があります。まさかと思って、電源スイッチをONしても、導通がありません。電源スイッチの不具合です。交換が必要ですが、AU-707はレバースイッチで、現在、まったくと言ってよいくらい存在しません。まして、AU-707用は、他のAU-707から部品取りして、交換する以外ありません。在庫、部品箱をひっくり返して、探すと、やっと1個、見つかりました。
“しめた!”これで、電源が復旧すると、アンプのフロントパネルを外して、交換しました。電源スイッチのON/OFFで、ラッシュ電流が流れるのを軽減するために、修理する間はスライダックで電源電圧を上げてショックがでないように心がけました。また、電源ON/OFFのスパーク軽減に0.01μFのコンデンサを外して、新たに0.1μ+120Ωのスナバ回路を付けました。このほうが、効果があるのです。

プリアンプ回路の修理

次に、電源をONして、プロテクション用リレーがONするかどうかをチェックすると、これはONします。さらに、スピーカー端子、RCA端子にケーブルをつないで、発振器入力を加え、アンプ出力を診てみます。
リレーがONして、片側Rchの出力が出てきました。Lchは出ません。
どこから出力は途絶えているのかの探索です。
アンプを開けて、シールドカバーを外します。入力から、オーディオ信号の流れを追っていきます。まず、入力セレクターの接触をチェックします。これは、OKでしたが、念のため、切替操作を繰り返し、そして、接点復活剤を振りかけてさらに、動かして、接点をクリーニングします。
ようやく、信号がL/R揃って出てきました。これで良いわけではなく、出てきた信号のひずみ測定することが必要です。接触ひずみがあると、ひずみ率は0.5~0.8%も2次高調波を中心として悪化します。この部分はOKになりました。
次に、トーン/ラインアンプ部分のチェックです。マスターボリュームの入出力は、OKでしたが、マスターボリュームのクリーニングをおこなっておきました。
さらに追っていくと、ラインL側の出力レベルが不安定です。トランジスタの水分侵入による劣化が予測されるので、交換。さらに出力コンデンサも交換。プリント基板全体のパターン面を再ハンダ。今度は、ラインアンプとパワーアンプ間の接続部です。当時のプリメインアンプはプリアンプ部とパワーアンプ部とは分離されるのが常識でした。
この接続スイッチの接触が不具合、信号がパワーアンプ部に伝わりません。そこで、切替スイッチを経由せず、ダイレクトに信号が伝わるように接続を変更。これで、入力からパワーアンプ部の入力部まで、良好な動作となりました。

パワーアンプ回路/プロテクションリレー部の修理

最初からプロテクション回路は良好で、リレーはONします。さらに、DCオフセットは正常に変化して、調整可能です。けれども、経年劣化を考慮して、半固定ボリュームを交換、次に、アイドリング電流調整も正常ですが、これも、半固定ボリュームを交換。ありがたいことに、このサイズの半固定ボリュームはまだ、入手できるのが幸いです。近い将来、このサイズのものは無くなるでしょう。
これでうまく動作するかを考え、スピーカー端子からの信号をチェックしてみます。信号レベルがL/Rに2dB程度のばらつきがありました。
これはパワーアンプ部の不具合か、それともリレー以降の不具合だろうか?
また、ひずみ率を測定すると、0.8%もあります。
試みに、音楽を通して、聴いてみると、ややひずみが多い音です。これはリレーが原因と推測し、リレー交換することにしましたが、この大きなサイズで、プリント基板タイプのリレーは入手不可能です。そこで、現在使われるサイズで、接点性能に定評ある数少ない日本製に交換することにしました。AU-607/707の構造で問題点はここで、サービス性が良くないのです。
プロテクション部のプリント基板をやっと外し、リレー交換。
そこで、改めて、ひずみ率を測定すると、0.015%と、ほぼ発振器レベルにさがりました。これで修理は完了かと考え、エージング試験に取り掛かりました。けっこう、良い音です。ところが1時間後、RCHから、“バツッ”という瞬間的なノイズ!これではだめ!
少し、気持ちが下がって、パワーアンプ部のユニットをL/Rともに外し、不具合部を探すことは、NFBが掛かっているので、特定はできません。そこで、電圧増幅用トランジスタをすべて交換、ノイズを出しやすいとされるツエナーダイオードも交換。位相補償用セラミックコンデンサーもすべて交換。
さらに、プリント基板の部品穴部分をハンダ吸い取り器でハンダを取り除き、再ハンダ付け、ここまでやれば、まずは治るはずと、気持ちを持ち直して、組み立て、音を出すと良好、エージングテストも3時間経過でOK。

フォノイコライザーのチェックと修理

お客様はアナログレコードをこれから、また聴きたいということでした。フォノイコライザーは幸い、チェックしてみると問題ありません。けれども、念のため、出力コンデンサとトランジスタを交換、フォノ切替スイッチをクリーニング。これで、良い音でアナログレコードが鳴るはずです。
アナログレコードプレーヤーを接続、カートリッジをエンパイア4000DIIIにして、聴き始めます。アナログレコードはCDのようなぎすぎすしたところがありません。やはり、CDは小音量時、ビット数が減少するので、サウンドが荒くなるのでしょう。いろいろ聴いて、サンサーンスの“交響曲NO.3”
TERACレコードで聴きます。パイプオルガンの地響きするサウンドはもの凄く、さすが、TERACの録音を素晴らしいと再認識しました。
最後に、底板、ボンネット等を取り付けて、フロントパネルをきれいに拭いて、また、エージングを6時間おこない、修理終了となりました。

修理完了

これで、製造後、38年のアンプが生き返りました。私自身、開発設計に取り組んだ関わり合いのある最初のアンプ。大友デザイナーのエレガントなデザインを眺めて、感慨に浸りました。


バランス伝送・増幅におけるプリアンプの意義

電磁波ノイズ対策とバランス伝送・バランス増幅

パワーアンプにおいては、バランス増幅でスピーカーを+,-の両側から(ちなみにスピーカーユニットはフローティング機器で極性がないし、グランド電位もない)ドライブすることは、スピーカーユニットからの逆起電力のコントロールに有益だし、プッシュプルドライブであるから、ユニットへの電力供給能力は高い。その結果、パワフルサウンドが生まれるのだと私は思っています。

それではプリアンプの場合はどうなのでしょうか?プリアンプの負荷はパワーアンプの入力インピーダンスですから、通常、10kΩ以上と高く、電流供給能力は必要ありません。むしろ、ノイズを混入させたり、ひずみを増加させたりしないことが重要です。

近年、スイッチング,インバーター電源や携帯電話の普及で、かなりの電磁波ノイズが、電源から、オーディオ入力へと入り込みます。ところが、電磁波対策を施すと本来のオーディオアンプとしての音質が劣化しやすいことは、電波規格の厳しいCE規格試験対策を施すと体験できます。そのあたりを考慮したりして、いろいろなノイズ抑制アクセサリーが販売されていますが、その効果のほどはいろいろです。

オーディオ信号の伝送には、オーディオでは2~3mくらいの距離なら、RCAケーブルで充分と言われているようですが、近年、バランス伝送が少しずつ普及してきました。
その狙いは100年くらい前に遡ります。

遠距離の電話線伝送(特にアメリカ大陸間電話回線)で、ノイズ混入に悩まされた打開策として、ホット,コールド間のバランス信号にグランドラインを含めた3線式(バランス)伝送で、解決してきました。
また、数百メートルに及ぶコンサート会場(PA/SR)機器間の信号伝送は、バランス伝送が必須です。バランス伝送により、スイッチングノイズや照明機器からのデジタルノイズに悩まされることがないのです。このノイズ排除能力の基本理論は、対グランドラインから伝送ラインの飛び込むノイズ(コモンモード・ノイズ:例えば電磁波ノイズを含む)がバランス伝送では相互に位相が逆になっているので、ノイズを打ち消してくれるのです。少なくとも、バランス受け入力のあるプリアンプはこのポイントでノイズの点で有利です。

次に、アンプに入力されたオーディオ信号も電源からのノイズ(電磁波ノイズを含む)が増幅回路に混入してきます。その影響はとても数値化できるほどの大きさではありませんが、定性的に混入すると言えます。私はプリアンプといえども、バランス増幅して、コモンモード・ノイズを打ち消して、ノイズが発生しないバランス増幅が良かろうと、最近になって思うようになりました。大好評をいただいているバランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”は、単巻トランスによる電圧増幅になりますが、バランス伝送・増幅しているので、この方式も優れた方式と言えましょう。

サンスイのXバランス回路とプリアンプ回路

かつて、サンスイ在籍時、Xバランス増幅パワーアンプ“B-2301”/“B-2201”の製品化を終えて、次はプリアンプの製品化の段階になりました。モデル名は“C-2301”と決まりました。肝心のプリアンプ回路については、“B-2301”/“B-2201”がバランスダイレクト入力・増幅の機能を備え、Xバランス回路の能力を100%引き出すことを目指しました。

そうなると、プリアンプ回路もバランス増幅であるべきであるものの、当時は、Xバランス回路はパワーアンプに搭載するという観念が強く、プリアンプ部ラインアンプ回路構成は、ダイアモンド作動回路でホット側を構成し、その出力をダイアモンド作動回路で反転回路として、バランス増幅をおこなうかたちとして、やむなく製品化しました。
その後、“C-2301”の次期プリアンプ回路は、確か、バランス増幅をやめて、アンプ出力をトランス結合させて、バランス出力を構成しました。

それから、30年近くの年月が流れましたが、つい最近まで、私はプリアンプのバランス増幅はブリッジ回路により、2台のラインアンプでバランス出力を構成し、RCA入力の場合はバランス変換回路で増備せざるを得ませんでした。そうなると、バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBGシリーズ”のように、トランス・ダイレクトバランス変換回路がベストと思いました。

プリアンプ用Zバランス増幅回路(PZB)

つい最近、Zバランス回路の負荷抵抗を高くして、測定したところ、驚くほど低ひずみが得られました。また、出力インピーダンスは0.22Ω以下と、パワーアンプ並みの低インピーダンスです。回路常数の検討と電源構成の検討から、プリアンプ用Zバランス回路が完成し、製品化にこぎつけるパフォーマンスになりました。
特筆すべきは、プリアンプ用Zバランス回路はRCA入力、バランス入力ともに、差動入力として動作し、完全バランス増幅・出力とすることができたことです。
前述したように、アンプとして完全バランス増幅するので、コモンモード・ノイズ(電磁波ノイズ等)成分はこのバランス増幅により打ち消しあい、オーディオ信号に電磁波ノイズが混入することは全くありません。
さらに、副次的な特長として、ヘッドフォンのバランスドライブも極めて動作マージンを以て、動作できます。価格の高価なパーマロイ、ファインメット材を使うことがないので、販売価格を引き下げることができ、気軽にバランス増幅サウンドを楽しめます。
どうか、プリアンプ用Zバランス増幅回路(PZB)搭載フルバランスプリアンプ“MASTERS CA-888PZBシリーズ”にもご注目ください。

Zバランスプリアンプ,ヘッドフォンバランスドライブ回路 ブロックダイアグラム
Zバランスプリアンプ,ヘッドフォンバランスドライブ回路 ブロックダイアグラム


ファインメットコアのパッシブプリアンプへの採用検討

経緯

2015年末、あるオーディオファンの方から、“ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプを製品化できないか?”という問い合わせをいただきました。

MASTERSのパッシブプリアンプ、CA-777シリーズ(「トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777N/AC”」,「トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777NS”」など)、CA-999シリーズ(「バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBN/AC”」,「バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBC/O”」など)は評判が良く、サウンド的にも、電気的特性にも優れ、特に新素材コアを採用しようという考えはありませんでした。

熱心に“ファインメットを検討してできないか?”といわれるメールに、私も心が動き、何とかファインメットコアを入手できないものかと探してみました。

製造元である日立金属に当たってみても、ある程度の量でないと購入は難しそうでした。
そこで、トランスコア加工会社を見つけて、その会社でファインメットを入手してもらい、マスターズ向けのコアを入手できないものかと、人脈や、検索をして、探してみました。
ようやく、トランスのタムラと40年前取引していたカットコア加工会社とコンタクトとることができました。

ファインメットコアの入手・試作

さっそく、そのカットコア加工会社にTELすると、社長さんがTELに出てくれました。お話すると、“それなら、少量でも良いから、試作しましょう!”と言ってくれました。
お話を伺うと、コア形状はカットコアになるとのこと。カットコアは磁路がほぼクローズドループになるので、インダクタンスを大きくとれるのでOKと答えました。
けれども、カットコア形状にすることは、ファインメット素材シートをカットコア形状に捲いて、そのあと2分割にカットして、カット面を研磨する手間もかかり、部品コストはかなりアップすると予測されました。
パーマロイコアは非常に高価です。それ以上にファインメットによるカットコア価格は高価な見積りになりました。
そのような状況でも、私は試作することを決意して、少量で申し訳なかったのですが、CA-777シリーズに採用しているトランスコイルに適合する(コア断面積)コアサイズを指定して、CA-777シリーズ2台分のコアを4個注文しました。

年が明けて、2016年2月初旬にファインメットコアが入荷しました。
すぐ、試作しようと焦りましたが、受注残のマスターズアンプの製作にパワーを取られて、試作機を組立て・完成したのが3月末になってしまいました。
なるべく、シンプルにしたかったので、1入力・1出力タイプとしました。
「【写真1】ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプ試作機」を参照してください。

そのパフォーマンスの評価

電気的特性の、特にコア材の性能が発揮される高調波ひずみ特性を測定しました。

「【図1】MASTERS CA-777Nタイプ 高調波ひずみ率 : コア材による比較グラフ」に示すように、ファインメットもスーパーパーマロイも、極めて低ひずみで、非常に優秀です。但し、低域に関しては、ごくわずかに、スーパーパーマロイのCA-777Nのほうが低ひずみです。どちらも、非常に優れています。

ちなみにオリエントコアと比較してみると、中域から低域にかけて、上記2つのコアに比べてひずみが観測できるのは、オリエントコアは高磁束密度の動作領域では優れているものの、透磁率では、ファインメットやパーマロイに及ばないので、そのような結果になると思われます。

磁性体については、透磁率という言葉がよく出てきます。これは磁界において、磁化特性の鋭敏さを表すと言われますが、オーディオ機器においては、どのような特性に反映するかはあまり解説されていないようです。
透磁率が高いことは、それだけリニアな特性を示すと言っても良いでしょう。その成果は、低ひずみ特性を示すと結論づけても良いでしょう。

ファインメットコアは、低ひずみであり、透磁率が極めて高いですが、パーマロイより高い磁束密度動作領域でその優秀が発揮されるようです。
「【図2】トランスコア材による磁化特性の違い: 概略比較データ」を参照してください。

スーパーパーマロイは飽和磁束密度がファインメットに及ばないものの、その透磁率は低磁束密度領域では透磁率がファインメットより高く、ひずみ特性はもっとも優れた性能を示していると思われます。

結論として、ファインメットはある程度、透磁率が高く、飽和磁束密度も高い、バランスのとれた磁性体と言えます。オールラウンドで優れた性能を発揮する新素材と言えます。
一方、スーパーパーマロイは高い透磁率特性を生かす用途では最も優れた磁性体と言えます。

ヒアリング結果

ファインメットコア試作機

どちらかと言えば、その音調は暖色系、そして繊細であり、分解能に優れ、かつ、迫力があります。エネルギーバランスはフラット感であり、そして低域再現も見事です。広がり感、奥行感も充分です。
オケ,合唱,オペラ,ビッグバンド再生にも充分なパフォーマンスを示しました。もちろん、その静寂感は素晴らしいです。

スーパーパーマロイコア:CA-777N

ファインメットコアと比較すれば、音調はわずかに寒色系、繊細でありその分解能は見事につきます。低域感は、よく聴いてみると充分に再生していると認識できます。広がり感、奥行感の再現が素晴らしいです。
そして、静寂感の再生はトップと思います。どのような高S/N比のアンプでも、このローノイズ感は実現できないでしょう。
ジャズトリオ,ボーカル,室内楽,ギターソロなどの音源には最適でしょう。

オリエント試作機

その音調は、パワフルで、音楽をガンガン聴きたい方には最適です。もちろん、通常のプリアンプよりローノイズで、混濁感のないことはパッシブプリアンプのもっともすぐれた性能です。

結論

通常のプリアンプはノイズ発生に加え、電磁波ひずみの混入問題があり、良いアンプ設計、製作に考慮が必須な事項です。

今回の検討により、ファインメットコア搭載のマスターズのトランス式パッシブプリアンプの製品化を計画致します。ご期待ください。

参考情報

トランス巻線の基本式を載せておきます。
トランスの巻数を決める数式は以下のようになります。
N=E÷(4.44×A×B×f)
但し、N:巻数,E:印加電圧,A:コア断面積,B:最大飽和磁束密度(設計設定値),f:周波数

上記の式から、コアを大きくするか、飽和磁束密度が大きくとれるか、使用する最低周波数を高くできるかすれば、巻数は少なくてすみます。
身近なところでは、60Hz地域では、電源トランスの巻数は50Hz地域に比べて、巻数は少なくてすみます。ですから、世界の大多数の国では、商用電源電圧は60Hzが標準になっています。


ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプ試作機
【写真1】ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプ試作機

高調波ひずみ率 : コア材による比較グラフ
【図1】MASTERS CA-777Nタイプ 高調波ひずみ率 : コア材による比較グラフ

トランスコア材による磁化特性の違い: 概略比較データ
【図2】トランスコア材による磁化特性の違い: 概略比較データ

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